第619回 TBS落語研究会 寸評 2020年1月21日

  成城石井.com  ことば 演目  千字寄席

紙入れ 三遊亭わん丈 ★★

姦婦姦夫の濡れ場を、羽織の裏を布団に見立ててマイクにかぶせる新演出?が、かなりウケた。当人は落語史上記念すべき金字塔と自画自賛していたが、それほどのもんじゃなし。その他、笑ってくれないと楽屋うちで評判らしい研究会の客を、何とか攻略しようと、師匠譲りの劣化版枝雀、あの手この手奇声連発の涙ぐましい大奮闘。だんなに会う前に鳴り物入で夢の場を作り、うなされるくだりを入れるなど、努力を買って★一つ増し。ただし、「じいさんだから、けんかすりゃ勝てる」のサゲは思い切りスカ。

松竹梅 柳家小志ん ★

いや、こんな惨めな高座をこの席で初めて目撃した。それこそ、マクラからサゲまでたった一度、苦笑(?)らしきしわぶきが聞こえたのみ。完全に蹴られて、当人はこれから自棄酒じゃあるめえかと心配したほど。それもそのはずで、くすぐりは滑りっぱなし。それで焦ったか、字が読めない、ムヒツ、読めない読めないの連呼。後には婆さん婆さん納豆納豆の繰り返し。こういう悪あがきはかえって客を不快にさせるだけだから、やめた方がよろしい。だいいち、こんな古色蒼然たるネタを、いまどきウケさせようとする方が無理。しかも聴いたところ、謡も義太夫も素養はまったくなさそうだから、居直って古風に徹することもできない自縄自縛。お疲れサマ。

寝床 桃月庵白酒 ★★★★★

本日の白眉。終始客をダレさせず、確かな技量に裏付けされた、サービス満点の大熱演。何よりもいいのは、この噺にありがちなだんなのパワハラ的な暴君ぶりを、まったく感じさせなかった点。駄々っ子の幼稚園児のような、だんなの憎めないキャラクターを中心に、幇間じみたお相手の重蔵も、迷惑を被る長屋の面々も鳶頭も、みな承知で「寝床ごっこ」で遊んでいるような雰囲気。そのおおらかで洒落気たっぷりの気分が何ともいい。改めてこの噺には、そういう江戸の遊びの精神が不可欠なのを思い出させてくれる。ギャグとしては、冒頭の壊れたクラリネットのような「発声練習」、神さんが妊娠して来られないはずが豹変して「想像妊娠」、現実を突きつけられても諦めきれずに、今は語らないけど、そこを何とかと繰り返すおかしみ。最後は志ん生型で、義太夫を蔵から語り込む演出も付き、前二席の憂さが雲散霧消。

大工調べ 三遊亭遊馬 ★★★★

噺の前半、客席がほとんどくすりともしなかったのは、「松竹梅」の時と同じ。ただし、決定的に違うのは、この演者が決して変なウケ狙いのくすぐりを使わず、淡々と噺を進めていたこと。その内に溜め込んでいたエネルギーが、棟梁政五郎の胸のすくようなタンカで一気に爆発。前後およそ一分半はあろうかという、早口ながら、言葉はちゃんと粒立ち、まさにお江戸伝統の悪態。あまり惚れ惚れし、速記ができれば残らず書き取って置きたかったほど。もちろん、そこで火が付いたように客席はやんやの大喝采。それも、噺の力の配分が絶妙だからで、与太郎、棟梁、家主のそれぞれの描写も過不足なく見事。ただ惜しむらくは後半のお白洲で、大岡越前に貫目がいま一つ。通常の演出だと、奉行が叱りつけて一度政五郎に残り八百を払わせてから、改めてお呼び出しの手順だが、今回は続けて大家をへこましたので、インパクトに少々掛ける印象。ということで竜頭蛇尾とまではいかないが、惜しみつつ★マイナス1。

柳田格之進 三遊亭歌武蔵 ★★★

いやはや長い。特に後半はダラダラと変な思い入れの間まで置くから、打ち出しが21:15予定なのに、20分ほどもオーバーした。もともとこのお人、ガタイの大きさとガラガラ声が売りで、噺によってはそれがハマるのだが、こういう講釈種の古格な人情噺では、もろに力量が出る。特にこの噺、急に帰参がかなったり、帰参したらしたでなぜ父親が自分で請け出さないのかなど、不自然な設定が多いので、それを忘れさせる圧倒的な芸の力が必要なのだが。全体の演出は故人志ん朝そのまま、くすぐりに至るまでまったく同じで、志ん朝のビデオだと約45分だから、時間的にはそう違わないはず。ではどうしてこうまでダレが残るのか。やはり、親子の情感の表現、人物の動作や人間像の明確さ、畳み掛けるところで一気に畳み掛ける緩急の巧みさ、まあ、比べたら気の毒ながら、すべてが段違いなのだろう。それと、この演者にはどうあがいても、武家の17歳のお嬢様は無理。歌舞伎「妹背山」のいじめの官女のようなどら声では、楚々たる色気も女の情感もあったものでなし。結局、客の疲労感や眠気は、その全てが相俟ってのこと。新宿からの終バスに間に合って、本当によかった。  

高田裕史

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りゅうていふうし【柳亭風枝】噺家

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【芸種】落語
【所属】落語協会
【入門】二代目三遊亭百生(小河真之助、1895-1964)に入門
【前座】1963年6月、三遊亭百助で。1964年百生逝去に伴い、五代目柳家つばめ(木村 栄次郎、1928-1974)門下、柳家とんぼ
【二ツ目】1967年5月。つばめ逝去に伴い、74年9月五代目柳家小さん門下
【真打ち】1979年3月、初代柳亭風枝
【出囃子】男はつらいよらしき曲
【定紋】風神 ※オリジナル
【本名】佐藤治
【生年月日】1945年7月27日
【出身地】東京都葛飾区生まれ、浅草育ち
【学歴】東京都立葛󠄀飾野高校
【血液型】A型
【ネタ】竹の水仙 宗論 など
【出典】落語協会HP 柳亭風枝Wiki
【蛇足】口上芸、居合抜き。すさまじい芸達者

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かつらなんきょう【桂南喬】噺家

  【RIZAP COOK】  ことば 演目  千字寄席

【芸種】落語
【所属】落語芸術協会→落語協会
【入門】三代目三遊亭金馬に入門
【前座】1963年1月、三遊亭ゆたかで。金馬死去に伴い、1965年、二代目桂小南門下、桂ゆたか
【二ツ目】1967年10月、桂南笑
【真打ち】1977年4月、桂南喬。85年1月、落語芸術協会から落語協会に移籍。五代目柳家小さん門下に
【出囃子】吉原雀
【定紋】丸に剣片喰
【本名】末吉豊比古
【生年月日】1947年8月7日
【出身地】東京都中野区
【学歴】中野区立中野第三中学校
【血液型】AB型
【持ちネタ】牛ほめ 大工調べ 粗忽長屋 など
【出典】公式 落語協会 Wiki 
【蛇足】1984年、桂文朝(田上孝明、1942-2005)、桂文生らと落語芸術協会を脱退。その後、落語協会の五代目柳家小さん門下へ移籍。自転車が趣味。三遊亭円窓、柳家つば女らと落車会を結成

  【RIZAP COOK】  ことば 演目  千字寄席

かつらぶんしょう【桂文生】噺家

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【芸種】落語
【所属】落語芸術協会→落語協会
【入門】二代目桂枝太郎(池田芳次郎、1895-1978)に入門
【前座】1962年9月、桂枝平
【二ツ目】1966年4月、桂欣治
【真打ち】1974年10月、三代目桂文生
【出囃子】あほだら経
【定紋】違い鷹の羽
【本名】平稔
【生年月日】1939年8月23日
【出身地】宮城県石巻市
【学歴】宮城県立小牛田こごた農林高校
【血液型】O型
【持ちネタ】本膳 ずっこけ 馬の田楽 権助提灯 佐の山 お見立て 猿後家 民謡家主 王子の狐 位牌屋 棒鱈 蒟蒻問答 など
【出典】落語協会HP 桂文生Wiki
【蛇足】1984年、桂文朝(田上孝明、1942-2005)、桂南喬、弟子の桂きん治(→桂扇生)と落語芸術協会を脱退。その後、落語協会の五代目柳家小さん(小林盛夫、1915-2002)門下へ移籍。84年は落語芸術協会と上野鈴本演芸場とが軋轢を生じさせていた頃でした。2006年、文化庁芸術祭優秀賞受賞。都々逸しぐれ吟社同人。過去に7人の「文生」がいたといわれますが、当代は三代目を称しています。上方に同音の桂文昇がいます。

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りゅうていきんしゃ【柳亭金車】噺家

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【芸種】落語
【所属】落語協会
【入門】1964年6月、五代目柳家小さん(小林盛夫、1915-2002)に入門。柳家小丸で
【前座】1964年9月
【二ツ目】1968年5月
【真打ち】1978年3月、柳亭金車
【出囃子】鶴亀
【定紋】陰の花菱
【本名】宮崎悦男
【生年月日】1941年9月14日
【出身地】東京都江東区
【学歴】法政大学経済学部
【血液型】A型
【持ちネタ】
【出典】落語協会HP 柳亭金車Wiki
【蛇足】1975年、「たがや」でNHK新人演芸コンクール落語部門最優秀賞を受賞。キックボクシングのリングアナウンサーも務める。

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やなぎやこさん【柳家小さん】噺家

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【芸種】落語
【所属】落語協会
【入門】1963年4月、五代目柳家小さん五代目柳家小さん(小林盛夫、1915-2002)に入門、柳家小太郎で
【前座】1963年9月
【二ツ目】1967年3月、小ゑん
【真打ち】1976年9月、三代目柳家三語楼。2002年、小さんの死去に伴い、四代目鈴々舎馬風門下に。2006年9月、六代目柳家小さん
【出囃子】楠公
【定紋】八ツ車
【本名】小堀義弘
【生年月日】1947年7月21日
【出身地】東京都豊島区
【学歴】豊島区立高田中学校
【血液型】B型
【ネタ】真二つ(山田洋次) 頓馬の使者 目玉 ひとり酒盛 紺屋高尾
【出典】公式 落語協会 Wiki
【蛇足】五代目柳家小さん(小林則夫、1915-2002)は父、柳家花緑と小林十市は甥

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やなぎやこまん【柳家小満ん】噺家



  成城石井.com  ことば 噺家  演目 志ん生 円朝迷宮 千字寄席

【芸種】落語
【所属】落語協会
【入門】八代目桂文楽(並河益義、1892.11.3-1971.12.12、黒門町、実は六代目)に入門
【前座】1961年5月、小勇で
【二ツ目】1965年3月。71年12月、文楽死去に伴い、五代目柳家小さん(小林盛夫、1915.1.2-2002.5.16)門下に
【真打ち】1975年9月、三代目柳家小満ん
【出囃子】酔猩猩
【定紋】三ツ割桔梗
【本名】栗原理
【生年月日】1942年2月17日
【出身地】神奈川県横浜市
【学歴】横浜市立金沢高校→東京農工大学繊維工学部中退
【血液型】A型
【ネタ】居残り佐平次 本膳 宮戸川 など
【出典】落語協会 Wiki 柳家小満ん口演用「てきすと」
【蛇足】1973年、NHK新人演芸コンクール最優秀賞受賞。著書多数。『べけんや わが師、桂文楽』 (河出文庫、2005年)が参考になる。川田順造『人類学者の落語論』(青土社、2020年)に登場する。



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きんげんていはくらく【金原亭伯楽】噺家

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【芸種】落語
【所属】落語協会
【入門】十代目金原亭馬生(美濃部清、1928.1.5-82.9.13)に
【前座】1961年4月、金原亭桂太で
【二ツ目】1964年9月
【真打ち】1973年9月。80年3月、金原亭伯楽
【出囃子】鞍馬
【定紋】鬼蔦
【本名】津野良弘
【生年月日】1939年2月16日
【出身地】神奈川県横浜市
【学歴】法政大学
【血液型】A型
【持ちネタ】
【出典】公式 落語協会 Wiki
【蛇足】著書多数ながら、代表作は『小説・落語協団騒動記』(本阿弥書店、2004年)『小説・古今亭志ん朝―芸は命、恋も命』(本阿弥書店、2007年)。どちらも絶品。



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やなぎやこはん【柳家小はん】噺家

  【RIZAP COOK】  ことば 演目  千字寄席

【芸種】落語
【所属】落語協会
【入門】三代目桂三木助(小林七郎、1902-61)に入門
【前座】1960年4月、桂木久弥で。1961年3月三木助の死没で五代目柳家小さん(小林盛夫、1915-2002)門下、柳家さん弥に
【二ツ目】1964年10月
【真打ち】1973年9月。75年3月、二代目柳家小はん
【出囃子】並木駒形
【定紋】剣片喰
【本名】渡辺研三
【生没年月日】1941年12月18日-2022年4月25日 膵臓がん
【出身地】東京都足立区
【学歴】東京都立上野高校
【血液型】A型
【ネタ】
【出典】落語協会HP 柳家小はんWiki 
【蛇足】2022年4月25日、膵臓がんで死去。80歳。初代小はん(鶴見正四郎、1873-1953)は三代目柳家小さん(豊島銀之助、1853-1930)門下で、大正末期に八代目林家正蔵(岡本義、1895-1982)、五代目古今亭今輔(鈴木五郎、1898-1976)たちといっしょに革新派を結成した人。二代目登場まで40年以上も空白の名跡でした。またも空白になってしまいました。南無。

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さんゆうていかしょう【三遊亭歌笑】噺家

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【芸種】落語
【所属】落語協会
【入門】二代目三遊亭円歌(田中利助、1890-1964)に入門
【前座】1958年4月、歌寿美で
【二ツ目】1961年10月、三代目三遊亭歌笑。二代目円歌の死去に伴い、当時は二代目三遊亭歌奴だった三代目三遊亭円歌(中澤信夫、1932-2017)門下に
【真打ち】1973年9月
【出囃子】大名行列
【定紋】蔦
【本名】高水勉
【生年月日】1939年5月25日
【出身地】東京都あきる野市五日市
【学歴】東京都立五日市高校
【血液型】A型
【ネタ】純情詩集 馬大家 試し酒 うどんや
【出典】三遊亭歌笑ブログ 落語協会HP 三遊亭歌笑Wiki
【蛇足】二代目三遊亭歌笑(高水治男、1916-50)は叔父

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りゅうていさらく【柳亭左楽】噺家

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【芸種】落語
【所属】落語協会
【入門】八代目桂文楽(並河益義、1892-1971)に
【前座】1957年5月、桂文平で
【二ツ目】1961年5月。1971年、文楽の死去に伴い、七代目橘家円蔵(市川虎之助、1902-1980)門下に
【真打ち】1973年9月。1980年、円蔵の死去に伴い、当時は五代目月の家円鏡だった八代目橘家円蔵(大山武雄、1934-2015)門下に。2001年3月、六代目柳亭左楽
【出囃子】毛谷村の物着
【定紋】片喰
【本名】原田昌明
【生年月日】1936年12月14日
【出身地】広島県竹原市
【学歴】広島県立竹原高校
【血液型】A型
【ネタ】寝床 明烏 素人鰻 鰻の幇間 厩火事 松山鏡 馬のす 悋気の火の玉 権兵衛狸 景清
【出典】落語協会 Wiki
【蛇足】2019年からは竹原市を中心に活動中

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やなぎやこのぶ【柳家小のぶ】噺家



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【芸種】落語
【所属】落語協会
【入門】五代目柳家小さん(小林盛夫、1915-2002)に
【前座】1956年5月、小延で
【二ツ目】1958年9月、小のぶ
【真打ち】1973年3月
【出囃子】元禄花見踊
【定紋】花菱
【本名】本田延吉
【生年月日】
【出身地】東京都港区芝
【学歴】
【血液型】
【持ちネタ】味噌蔵 芝浜 寝床 強情灸 品川心中 たがや 山崎屋 勘定板 火焔太鼓 高田の馬場 佃祭 小言念仏 宿屋の富 蛙茶番 妾馬 厩火事 粗忽長屋 幇間腹 野ざらし 宮戸川 こんにゃく問答 風呂敷 青菜 子はかすがい 三枚起請 寄合酒 明烏 あわびのし 薮入り 長短 抜け雀 景清 文七元結 宿屋の仇討 甲府い とうなすや 猫久 富久 時そば
【出典】落語協会 Wiki
【蛇足】寄席に出ない「幻の噺家」で通っている



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はやしやきくおう【林家木久扇】噺家



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【芸種】落語
【所属】落語協会 相談役/トヨタアート
【入門】清水崑(清水幸雄、1912-74)の紹介で三代目桂三木助(小林七郎、1902-61)に
【前座】1960年8月、桂木久男で。師没後の61年2月、八代目林家正蔵(岡本義、1895-1982)門下に、初代林家木久蔵
【二ツ目】1965年9月
【真打ち】1973年9月。2007年9月、林家木久扇
【出囃子】宮さん宮さん
【定紋】中陰光琳蔦
【本名】豊田洋
【生年月日】1937年10月19日
【出身地】東京都中央区日本橋
【学歴】東京都立中野工業高校
【血液型】A型
【ネタ】新作:彦六伝 昭和芸能史 その時歴史が動いた 片岡千恵蔵伝 嵐勘寿郎伝 ラーメンは人類を救う  古典:目黒のさんま 湯屋番 蛇含草 鮑のし 道具屋
【出典】公式 落語協会 Wiki
【蛇足】トヨタアートは自ら経営し自らも所属する芸能事務所。二代目林家木久蔵は息子


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かつらぶんらく【桂文楽】噺家

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【芸種】落語
【所属】落語協会
【入門】八代目桂文楽(並河益義、1892-1971)に入門
【前座】1957年4月、桂小益で
【二ツ目】1959年6月。1971年、八代目桂文楽死去に伴い、七代目橘家円蔵(市川虎之助、1902-80)門下に
【真打ち】1973年3月。92年9月、九代目桂文楽
【出囃子】桑名の殿様
【定紋】三ツ割桔梗
【本名】武井弘一
【生年月日】1938年9月21日
【出身地】東京都台東区
【学歴】葛飾中学校
【血液型】B型
【持ちネタ】試し酒 など
【出典】公式 落語協会 Wiki 
【蛇足】落語協会相談役。趣味はゴルフ。ペヤングソース焼きそば(まるか食品)のCM出演は1975-82年(17年間)。おかみさんに『文楽でございます』(武井加津子著、ゴマブックス、2006)の著作あり。武井加津子さんは1941年台東区生まれの文京区育ち、二代目海老一海老蔵の息女で、誠之小→文京六中→上野鈴本演芸場。二代目海老一海老蔵は太神楽芸人で、海老一染之助・染太郎の師匠。染之助(村井正親、1934-2017)が弟で、染太郎(村井正秀、1932-2002)が兄で、三遊亭円駒(村井正彦、1899-1976、三代目三遊亭小円朝の弟子)の実子。

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さんゆうていえんそう【三遊亭圓窓】噺家

  【RIZAP COOK】  ことば 演目  千字寄席

【芸種】落語
【所属】落語協会
【入門】八代目春風亭柳枝(島田勝巳、1905-1959)に入門
【前座】1959年3月、枝女吉で。59年10月、柳枝死去に伴い、六代目三遊亭円生(山﨑松尾、1900-79)門下、三遊亭吉生で
【二ツ目】1962年11月
【真打ち】1969年3月、六代目三遊亭円窓。78年6月、円生に従い落語協会を脱会。円生没後の80年2月1日、落語協会に復帰
【出囃子】新曲浦島
【定紋】三ツ組橘
【本名】橋本八郎
【生没年月日】1940年10月3日-2022年9月15日 心不全
【出身地】東京都江東区(当時は深川区)深川生まれ、豊島区育ち
【学歴】東京都立文京高校
【血液型】B型
【持ちネタ】五百噺
【出典】三遊亭圓窓HP 落語協会HP 三遊亭圓窓Wiki 圓窓五百噺全集
【蛇足】落語協会相談役。息子は三遊亭窓輝。1970年6月21日から77年8月21日まで「笑点」の大喜利レギュラー。色紋付きはピンクだったにもかかわらず、地味でした。後任は三笑亭夢之助(佐藤信夫、1949-、2019廃業)。78年6月の落語協会分裂騒動で円生らと脱会。80年2月1日、落語協会に復帰。五百噺は2001年、名古屋市東区の含笑寺(曹洞宗)で完了。仏教知識に造詣の深い人でした。七代目三遊亭円生の襲名にに名乗りを上げましたが、2015年には取り下げました。。著書多数ながら、最初の作品『ふてくされ人生学―古典的生き方のすすめ』(社会思想社現代教養文庫、1972年)が秀逸でした。

  【RIZAP COOK】  ことば 演目  千字寄席

かつらしゅんちょう【桂春蝶】噺家

【芸種】落語
【所属】上方落語協会
【入門】1994年8月、三代目桂春団治(河合一、1930-2016)に三代目春蝶で
【出囃子】神田祭
【定紋】中陰花菱
【本名】浜田大助
【生年月日】1975年1月14日
【出身地】大阪府吹田市
【学歴】北陽高校
【血液型】0型
【出典】馬風一門HP 落語協会HP 鈴々舎馬風Wiki
【蛇足】2009年、繁昌亭大賞爆笑賞 2013年、咲くやこの花賞 父は二代目桂春蝶(浜田憲彦、1941-93)

第617回TBS落語研究会 寸評 2019年11月26日

  成城石井.com  ことば 演目  千字寄席

一目上がり 入船亭小辰 ★★

マクラの間、早口の言葉が粒立たず聞き取れない、大家と隠居は同一人物なのか、など、アラを言えば切りがない。隠居が説明するくだり、ちゃんとしぐさ、目の動きをともなっているのはよい。マクラの、頭がタイムスリップした水道調査員は、まったく老人になっていないが、「え? どっちの三平だ」はけっこうウケた。

駒長 蜃気楼龍玉 ★★★

円朝作品に意欲的に取り組み、師匠(雲助)譲りで語り口にもどっしり貫目が付いてきた。おしむらくは言葉に重複とくどさが目立つ。女房が「丈八」と直前に言っているのに亭主が「深川から丈八という男が」と繰り返したり、「損料」で足りるのを「損料代」と重ねたり。だからか、夫婦の会話を含む前半がダレる。立板に水のベランメエは貴重品だけに、そのへんの整理を切に望みたい。

掛け取り 柳亭市馬 ★★★★★

本日の白眉。この人、噺家には珍しく、地声がよく響くバリトンなので、ネタによってはそれがかえって薄味な印象を与え、実力の割に損をする場合があるのだが、こうした音曲を聴かせる噺になると、まず当代の独壇場。特に義太夫は、変に上方風にしゃがれず、朗々とした江戸前でけっこうなもの。日頃きちんと稽古していなければこうは行かないだろう。全体の演出では、最後に芝居ごっこの掛け合いを入れる円生の型。「掛け取り」なので、万才のくだりはない。けんかで逆に証文を入れさせる抱腹絶倒なくすぐりも円生通りだが、後味の悪さを少しも感じさせず、洒落気分が横溢。シメに古風な歌舞伎の味を堪能させて、いや、バカンマ。ごちそうさまでげした。

将棋の殿さま 三笑亭夢丸 ★★★

殿さまのパワハラぶりがエスカレートするにつれ、要所に新規の過激なくすぐりを交え、楽しめた。「切腹申し渡す」と言葉で言う代わりに、その都度、電光石火のいぐさで示すのはいい工夫に見えた。言葉遣いからして武士が武士にならず、昭和初期の映画に見る、ワンマン社長の前で平蜘蛛のようにはいつくばる社畜リーマンのさまなのは奇異。言葉とがめどこ吹く風の爆笑路線を突っ走るのだろうが、それでも円蔵の域に達するには、もう少したたみかけるリズム感を身に着けてほしいように思った。

火事息子 五街道雲助 ★★★★★

自他ともに任ずる十八番ゆえ、もはやなんの茶々も入れどころなし。しっとりと落ち着いた語り口、風貌まで、近年、師匠(馬生)そっくりになってきた感。古希を超えてもはや円熟の至芸に見えた。だんなの描写は優れ、目塗りのやり方を滾々と言って聞かせるくだりは、確かにこの人物が小僧からたたき上げの苦労人と納得させられる。全体の運びとしては、後半の母親のすっとんきょうぶりで笑いを多く取ることにより、とかくお涙ちょうだいに陥りがちなこの噺に、すっきりとよりよいバランス感を与えている。

高田裕史

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第616回 TBS落語研究会  2019年10月25日 寸評

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2019年10月25日(金) 東京・国立小劇場 古木優

熊の皮 春風亭喜いち ★★

かけあいが平板。周りの客は寝ていた。二つ目なりたてだそうで、話し方には勢いがある。大いに可能性を感じた。噺を選べばよいのかも。登亭

田能久 入船亭扇辰 ★★★★★

マクラで客を引き込んでからは全編息もつかせない。流れる話柄に聴き酔えた。はずれのない噺ながら、客を最後までそらさないのも芸の内だろう。尾花

蒟蒻問答 三遊亭歌武蔵 ★★★★

「甲府い」でも驚いたが、どうしてこんなにうまいのだろう。しっかりした型で大いに見せてくれる。人物描写も自然。映像が湧き出た。のだや

天狗裁き 桂三木助 ★★

さすが小林家。かまない。高っ調子のスピード感ある流々とした話しぶりに酔いたかったが、人物がみんな同じ声帯で興醒め。立体感なくマンガ見てるよう。竹葉亭

たちきり 入船亭扇遊 ★★★★★

ぞくぞくするほど色っぽい。でも自然で。飽きない言葉の選び方に落語の芸の奥行きを感じた。大雨押して参じた甲斐あったというもの。つきじ宮川本廛

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第615回 TBS落語研究会  2019年9月27日 寸評

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2019年9月27日(金) 東京・国立小劇場 古木優

【RIZAP COOK】

普段の袴  古今亭志ん吉 ★★★

落ち着いている。「落語」になっている。おもざしは味気ないが、通る声で心地よい。上下の使い分けがどうも。工夫が必要。光るものを大いに感じた。竹葉亭

蛙茶番   春風亭柳朝  ★★

一本調子の通る声が新味。誰がなにを言っているのかがてんでわからない。寝る客続出。こんなんで十二年も張ってたのか。「落語」を聴かせてほしい。いづもや

こんな顔  桂文治    ★★★★★

短い噺だからえんえんとマクラが続く。これが絶妙。安定した笑いがお次を期待させる、よいテンポ。どう終わらすのか気になりつつも、気持ちのよい笑いを最後まで提供してくれた。のだや

野ざらし  古今亭文菊  ★★★★★

ふらがある。色気がある。面妖なしぐさがいい。落ち着いたいなせな語りぶりは役者じみてて小気味よい。人物の彫り込みもわかりやすい。ふとしたあわい、文菊ワールドだった。つきじ宮川本廛

猫の災難  橘家文蔵   ★★★★

畳にこぼれた酒をせこく飲み干すしぐさは絶妙。ささやくような話柄も色気が漂ってて悪くない。たまに都下のあんちゃんが操るような言葉遣いが。これは興醒め。喜代川

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つきていはっぽう【月亭八方】噺家

【芸種】落語 
【所属】上方落語協会 月亭一門 吉本興行
【入門】1968年12月、初代月亭可朝(鈴木すずき、1938-2018)に入門 八方で
【出囃子】夫婦万歳
【定紋】月、結び柏
【本名】寺脇清三
【生年月日】1948年2月23日
【出身地】大阪市福島区
【学歴】浪商高校(現大坂体育大学浪商高校)→関西学院大学経済学部オープンカレッジコース
【血液型】O型
【出典】上方落語家名鑑 吉本興行 月亭八方Wiki 月亭八方twitter
【蛇足】上方落語協会顧問 息子は月亭八光 「竹の水仙」NHK日本の話芸2022年9月18日放送(2022年7月7日NHK大阪ホール収録)。※浪曲の広沢菊春に基づくものと本人自身がことわっている。大名は細川越中守

第614回 TBS落語研究会 2019年8月26日 寸評

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2019年8月26日(月) 東京・国立小劇場 高田裕史

五目講釈 春風亭正太郎 ★★

難しい講釈場面もトチリなく、大熱演は大いに買える。案の定、クライマックスで息切れして、テンポ、リズムがどんどんずれてしまうのはしかたがない。前半、棟梁夫婦、若だんながみんな同じ人物に聞こえるのは、言うだけ野暮ながら、まあ年季の問題か。

弥次郎  柳家小せん  ★★★

パンフにもあった通り、当人が私淑する扇橋譲りで、寄席ではなかなかできないフル・バージョンで「道成寺」まで通した意欲はりっぱ。ただし、やはり長くてダレる。北海道も猪退治も、ここの客層には色褪せたくすぐりの積み重ねで、さほど笑いは取れない。むしろ新味のある「道成寺」にポイントを絞って練りこんだ方がベターだろう。

鰻の幇間 春風亭一之輔 ★★★★

もともと、この人のやり方は、客が逐電した後の、これでもかこれでもかこれでもかと畳み掛ける一八の悲痛な叫びが眼目。黒門町文楽のあの、明治の芸人の哀感などというレベルのきれいごとなど、みじんもない。最後は心まですっかりむしられた上、仲居さんの誕生会で座敷をたたき出される救いのなさ。加えて当人いわく、濃いカルピスの原液のように、意地でも笑わない落語研究会の客を、意地でも笑わさずにおこうかと、鬼気迫る執念が加わり背筋が寒くなった(笑)。まずは極上々吉、本日のMVP。

小言念仏 橘家円太郎  ★★★★

主人公の念仏とぼやきの背後の、家族の日常が鮮やかに浮かび上がる緻密な描写は秀逸。癇癪がだんだん高じて、やさしく「さん付け」にしていた嫁がいつの間にか呼び捨てになったり、孫の赤ん坊の粗相にいらいらするくだりなど、地味ながらこの演者ならでは手堅い技量が光る。小三治の隠居の、ギャグ漫画的なおもしろさとは違った持ち味で、トリのじゃまにならない理想的なヒザ替わり。

淀五郎  柳亭市馬  ★★★

お待ちかね。全体に手堅い演出だが、難を言えば、団蔵が独白の形で、自ら「なぜ判官の側へ行かないか」のネタばらしを早々にしてしまうので、後半の仲蔵のアドバイスが被って、ややくどい印象を受けた。

番外 主催者 -★★★★★

ただでさえロケーションが悪く、行きも帰りも路線バスはとうになくなっているのに、本日にかぎって帰りの劇場発バスは「ありません」と。なんだこりゃ。おかげでぞろぞろ。9時も過ぎて地下鉄まで延々と長蛇の列。客をなめてんのか。

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