【半分垢】はんぶんあか 落語演目 あらすじ
なんとカラダの半分は
成城石井.com ことば 噺家 演目 志ん生 円朝迷宮 むだぐち 故事成語
【どんな?】
お相撲さんが出てくる噺。小ばなしが元になった軽い笑いです。
別題:垢相撲 付け焼刃 富士の雪
【あらすじ】
巡業から久しぶりに帰ってきた関取。
疲れからぐっすり眠っているところへ、ひいきの客が訪ねてくる。
かみさんに、寝ているなら起こさないでいいと言い、相撲取りは巡業に出ると太るというから、さぞ大きくなったろう、と尋ねる。
おかみさん、ここぞとばかり。
戸口から入れないので格子を外さなければならなかったとホラを吹く。
それを奥で聞いていた関取。
客が帰った後、おかみさんに
「三島の宿で茶屋から富士を見て、大きなものだと感心していたら、そこの婆さんが『大きく見えても、あれは半分雪です』と、普通なら日本一の山をお国自慢するところを、逆に謙虚に言った。その奥ゆかしさに、かえって富士が大きく見えた」 と語った。
さらに関取は
「人間は謙虚であれば、他人は実際より自分を大きく見てくれるのだから、自慢はするな」
と説教した。
そこへ、また別のひいきの客が来た。
おかみさん、今度は
「関取は細くなって、格子の隙間から入れるぐらいです」
関取がびっくりして顔を出すと、客は
「とてもそうは見えない。大きくなった」
「いえ、これで半分は垢です」
出典:五代目古今亭志ん生(美濃部孝蔵、1890.6.5-1973.9.21)
【しりたい】
二つの小ばなしから
富士山を謙遜するくだりが、寛政元年(1789)刊の笑話本『室の梅』中の「駿河客」、「半分は垢です」のオチの部分が元禄14年(1701)刊『百成瓢箪』中の「肥満男」と、以上二つの小ばなしから構成されています。
相撲取りが登場する噺
このほかにもいくつかの噺があります。
たった3尺2寸(97cm)の鍬潟が6尺5寸・45貫(197cm、170kg)の雷電為右衛門を転がす「鍬潟」、第六代横綱の出世譚「阿武松」、大関にそっくりなばっかりに……の「花筏」、バレ噺の「大男の毛」など。
見て楽しむ
この噺にでもわかりますが、昔の相撲は、体の大きいことをことさら気にし、大きいと言われることを極端にいやがる傾向があったようです。
一般人との体格差があまりにも激しかったからです。
190cmを超える若者や100kgを超える少年は、相撲が弱くても見世物扱いで土俵入りをさせられたり、ただでさえ好奇の目で見られることが多かったからでしょう。
この噺をよく演じた五代目古今亭志ん生(美濃部孝蔵、1890.6.5-1973.9.21)の速記でも、「二階の屋根の上に関取の顔があった」、「十枚も布団をたして掛けた」、「顔は四斗樽、目はタドン」「道中で牛を二、三頭踏み殺した」と、言いたい放題です。
二階の屋根から顔
身長で歴代第3位(227cm)の記録を持ち、巨人の代名詞としてしばしば引き合いに出される大関、釈迦ヶ嶽雲右衛門(1749-75)の逸話です。