【ぽんこつ古木の小屋】

ぽんこつふるきのこや

【2025年2月14日】『落語を聴かなくても人生は生きられる』(松本尚久編、ちくま文庫、2012年)。たしかにその通り。これをぱらぱらめくっていたら、長井好弘氏の一文が目についたので、まずはこれを。「志ん朝『最後』の十日間」。なるほど。しみじみ。うなります。さすがです。ただ、冒頭が気になりました。「二〇〇一年から二〇〇七年までの七年間で、末広亭のネタ帳に『古今亭志ん朝』という名前が記されているのは、わずか十日間である」と。これ、わざわざ記す意味があるのかな。だって、志ん朝は2001年10月1日に亡くなっているわけですからね。02年以降はネタ帳に記されるはずもない。当たり前だろうと。それでも、大家がこうやって記しているので、なにか深意が潜んでいるのかなとも。深掘りして、思いは巡るのですが。うーん、わかりません。

【2025年2月13日】『八代目正蔵戦中日記』(八代目林家正蔵著、中公文庫、2022年)なる本。林家彦六が敗戦を迎えた頃は五代目蝶花楼馬楽でした。昭和20年8月15日の項の後段には「西新井へ往くに、堤の上を並んで朗かに七八人の青年が談笑してゐる。近づきみればみな半島の青少年にて郷土の言葉で話し合ってゐたるには意外なりき。」とあって、敗戦のようすをこんなふうにぼんやりとにじませています。うまい演出だなと思います。毎日せわしなくいろんなところを行き交う中での光景でした。そのまじめぶりは予想通り。

【2025年2月9日】訪米した石破茂首相がトランプ米大統領と仲良くなって帰ってきました。トランプ氏は長老派(カルバン派)、石破氏は日本キリスト教会(新日キ、カルバン派)で、同じ宗派の信者なのです。仲よしの裏はこれですね。なによりの固い絆。「次回の会談は教会ミサの後に」となるのでしょう。石破氏は母方の曽祖父が熊本バンドの出身だそうですから、筋金入りです。長老派はネオコンの宗派です。これは驚き。石破政権は長期にわたるかもしれません。安倍氏とは違うような。

【2025年2月6日】Youtubeで鮫島タイムスを見ていたら、何の手違いか、快楽亭ブラック師の毒演会がなだれこんできました。四段目、オマン公社、文七ぶっとい、女女指南、イメクラ五人廻し、SM幇間腹、道具屋松竹編……。政局から性局へ。ついつい気を許して見てしまいました。朗々と。毒だらけ。なぞっていない口跡にニヤリ。ほどよいめりはりも小気味よく。自らこさえた言葉を脳内に何度も循環させて自家薬籠中のものに醸成していったかんじです。見ず知らず、人の心に突いてきます。うなりました。これぞ話芸。昔の寄席では客はこんな毒もりもりの噺でげらげら笑っていたのでしょう。木戸前にともされるほのかな灯を見た思い。

不定期連載  日本史のあらすじ  2021年11月13日~

不定期編集  落語の年表  2023年12月1日~

成城石井

■古木優プロフィル
1956年高萩市出身。高田裕史と執筆編集した「千字寄席」の原稿を版元に持ち込み、1995年に「立川志の輔監修」付きで刊行してもらいました。これがどうも不本意で。サイト運営で完全版をめざそうと思い立ち、2004年10月16日からココログで始めました。これも勝手がいまいち。さらに一念発起、2019年7月31日からは独自ドメイン(https://senjiyose.com)を取得して「落語のあらすじ事典 web千字寄席」として再始動しました。編集者として露命をつなぎ、噺に潜む「物語の底力」を渉猟中。博士(学術)。

成城石井

主な著書など
『千字寄席 噺がわかる落語笑事典』(PHP研究所)高田裕史と共編著 A5判 1995年
『千字寄席 噺の筋がわかる落語事典 下巻』(PHP研究所)高田裕史と共編著  A5判 1996年
『千字寄席 噺がわかる落語笑事典』(PHP研究所)高田裕史と共編著 文庫判 2000年
『図解 落語のおはなし』(PHP研究所)高田裕史と共編著 B5判 2006年
『粋と野暮 おけら的人生』(廣済堂出版)畠山健二著 全書判 2019年 ※編集協力

成城石井

■主な執筆稿
数知れず。ゴーストライターもあまた。売文の限りを尽くしました。

成城石井

バックナンバー

【草戸千軒】2019年8月3日

【志ん生のひとこと】001.2020年1月2日

【志ん生のひとこと】002.2020年2月2日

【白戸若狭守】2022年11月17日

志ん生と忍者】2023年9月26日

【志ん生のひとこと】003.2023年9月27日

【別格だった東宝名人会】2024年3月10日

【落語家のどこを見ているのだろう】2024年3月11日

成城石井

 

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