江戸の古いしゃれことば。もともと、相手の意を受けて「そのこと、そのこと」と、大賛成という意向を即座に伝えるものです。それを重ねことばとせず、着物でしゃれているわけです。
「そのこと」は「布子(ぬのこ)と」という地口。布子は綿入れになった木綿の生地。それを二枚重ねに縫って秋冬用の袷にし、夏用には一枚で裏地なしのひとえものにします。もう一つ、「ことあわせ」は「事合わせ」で、万象のリズムがよく合うこと。動詞で「こと合う」などとも言います。これで、相手への同意と、同時に「合せ=袷」でダブル、すなわち「そのこと」の反復をも示すわけです。なかなか手が込んでいます。