【猪口才】ちょこざい ことば 落語 あらすじ
漢字の「猪口」は当て字で、元々は小型の酒器の「ちょく」「ちょこ」から転じて「小さい子供」または小柄な者をそう呼んだ俗語。
したがって、「ちょこっと(わずかな)」才があるだけで、それを鼻にかけて生意気な奴、というふうに使われるようになった、いわばダジャレです。
いかにも、怜悧な才気煥発な人間を、理詰めで言い負かされる腹いせに「生意気だ」の一言で排除することが多かった、江戸期以来の日本社会の通弊が伺えます。
主に武士階級に使われたとされますが、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』にも「ちょこざいぬかさずと、はよう銭おこせやい」などとある通り、芝居や浄瑠璃、戯作などを通じて町人の間にも広く普及していました。
上方では「ちょこい」とも。次第に形容動詞「ちょこざいな」に特化して、明治大正はもちろん、戦後まで主に老人語として残っていましたが、今は死語となっています。
名優、初代中村吉右衛門(1886-1954)のふだんの口癖でもありましたが、昭和20年代から30年代にかけ、漫画雑誌、ラジオ、テレビなどで人気を博した『赤胴鈴之助』の主題歌の冒頭、「ちょこざいな小僧め、名を、名を名乗れ」というセリフを思い出される向きもあるかもしれません。