【お土砂】おどしゃ ことば 落語 あらすじ



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真言密教で加持祈祷に使われた、霊力を持った砂です。

『沙石集』(鎌倉期の仏教説話集)には、「この土砂を墓所に散し、死骸に散らせば、土砂より光を放ち、霊魂を救て、極楽に送る」とあります。

『江戸文学俗信辞典』(石川一郎編、東京堂出版)には「渓流の土砂を洗い清め、護摩加持をして、その砂を硬直した死体の上にまけば、功力によって柔軟となり、諸罪を滅して福報を得しめるもので、土砂の一粒を死者の口中に入れたものであろうが、硬直した屍体はまだ冥福を得られないものとして、やがて身体に振りかけるようになったものであろう」とあります。

江戸の歌舞伎や戯作でもよく登場する風習でした。

たとえば、『東海道中膝栗毛』(十返舎一九)。

京見物で方広寺の大仏殿の柱の穴くぐりをしようとした弥次郎兵衛が、道中脇差の鍔がつかえて出られなくなり、周りの見物衆が、身体を柔らかくして引っ張り出すのに、お土砂をかけろと言ったりする騒動が持ち上がります。

歌舞伎では、「松竹梅雪曙」という八百屋お七ものの序幕で、たまに「お土砂の場」という滑稽な場面が出ることがあります。

この場は、昭和43年(1968)1月歌舞伎座の先代勘三郎以来、しばらく絶えていたのを、昭和61年(1986)1月に、最晩年の先代松緑が復活してから、かなりよく上演されるようになりました。

平成31年(2019)1月にも、市川猿之助が歌舞伎座で演じています。

紅屋長兵衛、通称紅長というまぬけな男が、早桶の中に亡者姿で入っているのを見て、釜屋武兵衛がお土砂をかけると、紅長がぐんにゃり。

その後、それで「復活」した紅長が、周りの連中全員にお土砂を掛けまくると、一同すべてぐにゃりとなって下手に入るという、たわいもないくすぐりです。

【語の読みと注】
松竹梅雪曙 しょうちくばいゆきのあけぼの
紅長 べんちょう



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