【言わぬが花の吉野山】いわぬがはなのよしのやま むだぐち ことば 落語 あらすじ
いかにも日本人的な言い回しです。
「口に出して言わない方が奥ゆかしい」ということで、美学として称賛されるものですね。
世阿弥の「秘すれば花」から派生したものでしょうか、おもむきがちょっと異なるかもしれません。
花の盛りを限って楽しむことから、その場かぎりでいちばんよいことのたとえです。
「見るが仏、聞かぬが花」「待つが花」などの類似表現もあります。
小唄の「お互いに 知れぬが花よ」はダブル不倫の対処法です。
「花」から桜の名所を出していますが、当然「吉野」と「良し」も掛けています。
歌舞伎では、芝居小屋で旗本の狼藉の留め男(仲裁)に入った侠客の幡随院長兵衛が「何事も言わぬが花の花道を」とそっくり返って嬉しそうに言います。
裏返せば「空気を読め」という口封じ。
ビアスの『悪魔の辞典』風に解釈すれば、「口は災いの元」と同義です。