【本サイトが毎日新聞に】知る 落語 あらすじ

成城石井

当サイトが毎日新聞「余録よろく」に取り上げられました。朝刊一面に毎日連載されている名コラムじゃないですか。めくってみたら、故戸田ツトム氏や岡孝治氏らのアートディレクションも古さを感じさせることなく健在です。他紙を圧倒しています。毎日新聞、すばらしい!  以下に「余録」を引用させていただきます。

【余録】

熱い湯に「ぬるい、ぬるい」と競って入り…

毎日新聞朝刊 2021年4月28日付

 熱い湯に「ぬるい、ぬるい」と競って入り、あまりの熱さに「口きくな」「動くな!」とそろってせっぱ詰まる江戸っ子である。そのやせ我慢がまんや意地っ張りは「強情灸ごうじょうきゅう」はじめ落語の笑いの源泉となってきた▲明治の新作落語「意地くらべ」も、借金の貸手と借り手がそれぞれ勝手な理屈で意地を張り合うのがおもしろい。その中に出てくる「ネズミの懸賞」とは、当時の東京市が行ったペスト予防のためのネズミの買い上げのことだという▲参考にさせてもらった「web千字寄席」によれば、この施策もむなしく当時の東京ではペストの流行で300人以上の死者が出たという。意地っ張りの落語にも刻まれている江戸―東京の感染症とのたたかいの歴史の一こまである▲「大衆娯楽である寄席は社会生活の維持に必要なものだ」。こう緊急事態宣言下の営業継続を表明した東京都内の寄席4軒と落語家の団体である。もちろん感染対策をとったうえで、芸人らの窮状を背景に投げた意地の一石だった▲これには政府の担当相が再考を促すなど、批判の声が出たのも当然だろう。だがこの江戸っ子譲りの強情、落語ファンの支持ばかりか、政府のコロナ対策への不信や不満も取り込んで予想を超える応援の盛り上がりを見せたのである▲日ごろ落語にお世話になっている小欄だが、今はやはり人出の抑制を求める専門家に従いステイホームをおすすめするしかない。ただ、いつか誰かがとびきりの人情噺にんじょうばなしにするかもしれぬ令和の「強情寄席」だ。

成城石井

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