なぬし【名主】ことば 江戸覗き



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名主というのは町年寄の下にあったのですね。
ここでは、町年寄の下役として江戸の住民に寄った代表者として、
双方の間を取り持つ役割を果たしていた名主について記します。

名主の分類  【RIZAP COOK】

名主は、以下のような分類がなされています。

江戸の町の本来の構成員は家持=町人で、名主はその町の代表者です。

江戸では家持層が早くから不在となる場合が多く、17世紀末には町名主は姿を消してしまいます。

町名主に代わって、家守の代表である月行事が町を代表するようになっていきます。

江戸の町名主には、町が町奉行支配(管理)の区域である「御町中」になった時代によって、以下の4つの分類があったといわれています。

草創名主
慶長年間の町割で町となった地、天正以前からあった村が「御町中」に編入された場合での名主。家康の江戸入り以来の由緒を持ちます。元文年間(1736-41)に29人(のち24人に)いました。

古町名主
寛永年間(1624-44)までに成立した古町を支配(管轄)した名主。文化年間(1804-18)には79人いました。代官支配から町奉行支配になった町の名主です。

平名主
正徳3年(1713)以降に代官支配から町奉行支配になった新市街地の名主。それ以前の町と区別するため「新町」と呼びました。町奉行と代官の両方の支配を受ける土地を「町並地」といいますが、平名主はまさにここが対象となります。

門前名主
寺社奉行から町奉行へ支配が移った町の名主。

正徳3年(1713)とはどんな年か。その年の閏5月15日に、代官支配だった、本所、深川、浅草、小石川、牛込、市谷、四谷、赤坂、麻布などの近郊市街地259町が町奉行支配となったのです。この年こそは、江戸のなりたちを考える上でエポックメイクな年といえるでしょう。

名主の仕事  【RIZAP COOK】

町奉行→町年寄→年番名主→名主→家持(大家が代行)→地借人(または店借人)、といった伝達順序です。年番名主はのちに名主肝煎、世話掛名主になっていきます。

名主の仕事はいろいろあります。ざっと並べると以下のとおりです。

町触の伝達
人別改
忠孝奇特者の取り調べ
火の元の取り締まり
火事場での火消人足の差配
町奉行や町年寄からの指示による取り調べ
町奉行所への訴状や届書への奥印
沽券状その他の諸証文の検閲や奥印
支配町内紛議の調停
失行者への説諭
町入用の監査
祭礼の監督と執行

このように見ると、名主は管轄町内のすべて町用と公用にかかわっていたのですね。

名主というのは落語には出てきません。落語を聴いているかぎりでは見落としがちなのですが、当該町と町年寄の中間に位置して、町民の生活に根づいた課題に対処していたのですね。江戸を知る上ではかなり重要な存在といえるでしょう。

名主組合  【RIZAP COOK】

町奉行支配地が拡大していくと、正徳年間(1711-16)には地域ごとに、日本橋北組合、日本橋中組合、日本橋南組合、霊巌島組合、芝組合、神田組合、浅草組合といった名主組合が生まれました。

享保7年(1722)には、これらが再編成されて一番から十七番までの組合に生まれ変わりました。

各番組ごとに年番を決めました。とりわけ、日本橋北の一、二番組と日本橋南の四番組の年番を「南北小口年番」といって、町触などの急なお達しなどを各番組に伝達させるようなネットワークが形成されていきました。番名主はさらに、その頃問題化していた名主のサボりや不正の監督にもあたりました。この番組制は、十八番組から二十一番組まで生まれ、番外の吉原と品川ができて、合計23組となりました。

名主の数は、享保7年(1722)に17組264人いましたが、天保2年(1831)には23組246人へと少し減りました。一人の名主が支配する町の数は平均6、7町でした。

そもそも名主は兼業が禁じられていたため、支配町内から役料を徴収することが許されていました。この金額は、幕末では、平均60両ほどを手にしていたいいます。

参考文献:吉原健一郎『江戸の町役人』(吉川弘文館、1980年)、幸田成友『江戸と大坂』(冨山房百科文庫、1995年)、加藤貴編『江戸を知る事典(東京堂出版、2004年)、大濱徹也、吉原健一郎編『江戸東京年表』(小学館、1993年)、『新装普及版 江戸文学地名辞典』(東京堂出版、1997年)

【語の読みと注】
草創名主 くさわけなぬし
古町名主 こちょうなぬし
平名主 ひらなぬし
町並地 まちなみち
町触 まちぶれ
人別改 にんべつあらため
店借人 たながりにん
地借人 じがりにん
家持 いえもち
家主 いえぬし
大家 おおや
家守 やもり
町入用 ちょうにゅうよう

町年寄 月行事

【RIZAP COOK】



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