あいえんきえん【合縁奇縁】故事成語 ことば

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人と人との交わりは不思議な縁によるものだ、ということ。

仏教由来。というよりもこれは、日本由来の成語ではないでしょうか。

「合縁機縁」「愛縁機縁」とも書きます。

とりわけ、男女の間での、気心が合うとか合わないとかについて言うことが多いようです。

つまずく石も縁のはし

道を歩いてつまずいた石にも縁があった、ということで、日本人は縁が大好きです。人間社会での合理的に説明できないことはすべて「縁」で片づけているようです。

袖すり合うも他生の縁

見ず知らずの人道ですれちがうのも前世からの因縁なのだ、ということ。なんだか説明がつかないのは前世からの因縁によるもの、それが縁というものである、という具合です。
能楽では「一樹の陰」「一河の流れ」ということばを使って「縁」を表現します。

「縁」は、江戸時代に入ると、人々の生活の細部に仏教がしみ込んでいき、「縁は異なもの味なもの」ということばが普通に使われるようになっていきます。

そして、明治6年(1873)頃に流行した俗曲「四季の縁」。

春は夕の手枕に
しっぽり濡るる軒の雨
ぬれてほころぶ山桜
花がとりもつ縁かいな

結びの「縁かいな」が特徴で、大流行しました。

明治24年(1891)頃には、これを替え歌にした徳永里朝(中井徳太郎、1855-1936、→三代目哥沢芝金→徳永徳寿)が、さらなる「縁かいな節」を大流行させました。

夏のすずみは両国の
出舟入り舟屋形船
あがる流星、星くだり
玉屋が取り持つ縁かいな

空ものどけき春風に
柳に添いし二人連れ
目元たがいに桜色
花が取り持つ縁かいな

「竜生」も「星くだり」も花火の種類で、花火業者の玉屋が取り持つという具合。

徳永里朝は上方の人で、盲目の音曲師。上方では桂派の門下でしたが、東京に移って三代目春風亭柳枝の門下となりましたので、柳派に。

しあわせは三世の縁を二世にする

という川柳があります。

江戸期に一般に通用していた、縁についての「親子は一世、夫婦は二世、主従は三世」という言い回しを踏まえて、その家のお女中が後妻になったことを詠んでいるのです。

主従の縁は、親子や夫婦のそれよりも深いのだということ。

これぞ、前近代的な感覚ですが、これを逆手にとって、主従の三世の縁を二世の縁につづめる、といって、それを「しあわせ」だと詠んでいるのです。

「しあわせはさんぜのえんをにせにする」と読んで、「二世の縁」は「偽の縁」だとこきおろしているのです。後妻に格上げされたお女中の面目躍如というところでしょうか。すごい句ですね。これも宿世の縁(ずっと前から決っていたこと)ということでしょうか。いやはや。

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