【そのこと褞袍で一分二朱】
そのことどてらでいちぶにしゅ
「そのことばかり」の地口で「そのこと羽織」があって、その「そのっこと羽織」からの連想で「そのこと褞袍」となったものです。
羽織から褞袍への連想です。
意味は、「そのこと」を言っているだけ。それだけ。
「一分二朱」は、深川の揚げ代をさします。この料金で「三切り」だったとか。「切り」は短い時間(正確な時間は不明)で遊ぶことを称していました。
終わりがないことを「きりがない」と言うのは、ここから来ているという説もあります。女との行為があんまり気持ちよくて終われずにいるバカ男のにやけ顔が浮かびます。
さて。
「そのこと褞袍で一歩二朱」は、河竹黙阿弥の『忠臣蔵後日建前』に出てくるせりふです。「女定九郎」と通称された江戸歌舞伎のげてもの狂言(台本)です。慶応元年(1865)初演。
維新直前につくられた、男の役を女に仕立てたやけのやんぱちの芝居です。江戸も終焉を迎えていたので、この頃の歌舞伎はめちゃくちゃです。
あんまりのめちゃくちゃぶりに、昭和58年(1983)以来、お蔵入りです。
ちなみに、「一分」は千文。「二朱」は五百文。合わせて千五百文です。ややこしい。