だんだんよくなるほっけのたいこ【だんだんよく鳴る法華の太鼓】むだぐち ことば

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現代でも知られたむだぐちです。

情勢がだんだん好転してくるというのを、「なる」→「鳴る」から太鼓の音に引っ掛けたもの。「だんだん」は「どんどん」のダジャレです。

江戸では法華宗(日蓮宗)信者が数多かったので、お題目を唱えながら集団で太鼓を打ち鳴らし、町中を練り歩く姿は頻繁に見られたもの。

「だんだん」には、「ドンツクドンドン」と遠くから法華大鼓(団扇太鼓)の音が聞こえてきて、近づくにつれ徐々に大きく響くさまも含んでいるでしょう。

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あいはこうやにござります【藍は紺屋にござります】むだぐち ことば

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「あい」は主に幼児語で、返事や同意を示す感動詞。これに染料の「藍」を掛け、さらにそこから紺屋を出したまぜっかえしの言葉です。

子供同士の他愛ない言い合いでよく聞かれ、雑俳にも「おちゃっぴい あいは紺屋に…」とあります。

「あい」は関東、「はい」は関西起源とされますが、英語でも挨拶の”Hi”が訛って”Ai”となったりするので、そのあたりは人類共通のものがあるようです。

「藍」に掛けた用例は「藍は紺屋の使い物」など。変形で「鮎(あい)」を使った例も、「鮎が高けりゃ鰯を買え」など、多数流布しています。

いかさまたこさまあしはっぽん【烏賊様蛸様足八本】ことば むだぐち



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「ごもっとも」「さようで」の意味の「いかさま」と「烏賊様」をまぜっかえして「いかさまさかさま」と言っていました。

その発展形がこれ。

さらにいくと、「烏賊様蛸様トト様カカ様さかさま」となります。

リズムが悪くてことばにオチがありません。

オチのない笑いは中世に多いのですが、このむだぐちも室町期につくられてものでしょう。

ところが、「烏賊様蛸様足八本」はリズムにも切れがあって、「足八本」というオチもすんなり付きます。

これぞ近世流のむだぐちです。

ま、だからといって、さしたる深い意味はありませんが。

2011-13年、TBSテレビ系で『まさかのホントバラエティー イカさまタコさま』という番組がありました。

「ホントの中に潜むウソ=イカさまを選り分ける新感覚のクイズ系バラエティ番組」、「ホントかウソかの判断に悩む、真偽ぎりぎりの話題を楽しむという番組」だそうです。

さまぁーずの司会でした。

「いかさまたこさま」。

こんふうに使われるわけですね。

「いかさま」と言ったら「たこさま」が思い浮かぶのは、ごく普通の感覚なのでしょう。

ことばに発すると小気味いいですね。



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かたじけなすび【かたじけ茄子】むだぐち ことば



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「かたじけない=ありがたい」というだけの意味に、ことばが連なるむだぐち。「かたじけない」の「な」から「なすび」に引っ張り込む腕力には驚きです。

「な」ならなんでもよいので、「かたじけ奈良茶」ともいいます。

そんならば、「かたじけナイスガイ」とか「かたじけ夏目雅子」とかは、どんなものでしょう。



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