【志ん生のひとこと010】しんしょうのひとこと010 志ん生雑感 志ん生! 落語 あらすじ
あいつァ、線が太いからネ。
昭和36年(1961)11月14日(火)、早朝。
「あいつァ」とは来年には真打ち昇進予定の次男強次(→三代目古今亭志ん朝、1938.3.10-2001.10.1)のこと。仕事先の長崎から帰宅した。
茶の間でいっしょにラジオを聴いた。
朝太が司会する文化放送「民謡ジョッキー」を、である。
「シャレがいい」と、おやじはご満悦。
おやじはずっとニッポン放送専属だが、別に義理立てして勘当などはしない。当たりまえだ。
「線が太いというのはいいからネ」とは、おやじならではの炯眼。
次男の、いずれの出世を夢見る。
自分とは違うタイプの、文楽、円生のような正統派の噺家になろうことを。
志ん生は、目を細くして「ヘッヘッヘと笑いながら」思い浮かべていた。
志ん生が倒れる31日前の、美濃部家のちょっとした風景である。
高田裕史
参考資料:「週刊読売」(1961年12月4日発売)