城木屋 しろきや 演目

お豆料理は

【RIZAP COOK】

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ここでいう「豆」は女性をさす隠語です。念のため。

別題:お駒丈八 白木屋 白子屋政談

【あらすじ】

日本橋新材木町の呉服屋、城木屋庄左衛門が死に、あとにお常と、十八になる一人娘のお駒が残された。

お駒は界隈で評判の器量良しだが、こともあろうにそのお駒に、醜男の番頭丈八が邪恋を抱いた。

丈八は四十四歳になるが、背はスラッと低く、色はまっ黒けで、顔の表と裏がわからない、という、大変な代物。

ところが当人は本気で、お駒の婿は自分と一人決めをし、恋文を送りつけたが、もちろん、お駒は梨のつぶて。

それが、母親のお常の手に渡ってしまったので、丈八はお常に手ひどくしかりつけられ、
「どうせクビになるならば破れかぶれ、いっそのこと」
と、店の金五十両を盗み出して、吉原で全部使い果たしてしまう。

この上は、お駒を殺して自分も死ねば、心中と言われて浮き名が立つと、夜中にこっそりお駒の部屋に忍び込んだ。

お駒の寝顔を見て急に惜しくなり、さらって逃げようとゆり起こす。

承知したらよし、嫌と言ったら殺っちまおうと、刀で頬っぺたをピタピタたたいたから、お駒が目を覚まして悲鳴を上げる。

かわいさ余って憎さが百倍、やっと突くと、狙いが外れて床板まで突き通してしまい、抜けなくなって、そのまま刀と煙草入れの遺留品を残して逃走。

これから足がついて、丈八はお召し捕り。

お白州に引き出され、南町奉行、大岡越前守のお裁きを待つ身となった。

奉行に
「不届き至極な奴。娘駒とその方のなれ初めを申せ」
と尋問され、ごまかそうと
「十返舎一九の『東海道中膝栗毛』の挿絵を見ておりますと、お駒さんが参りまして『これはなにか』と聞きますので『岡部の宿で夜這いに行くところです』『夜這いとは何じゃ』『いずれ今宵』と、それにかこつけて豆泥棒(夜這い)に参りまして」
「豆泥棒とはなんじゃ」
「へえ、お駒さんは素人娘で白豆、商売女は黒豆で、十二、三の小娘はおしゃらく豆、十五、六がはじけ豆、天人はソラ豆」

一喝されて
「娘御を駿河細工と思えども、籠の鳥にて手出しならねば」
という艶書の文句の意味を問われると
「もとの起こりが膝栗毛、もうとう海道から思い詰め、鼻の下も日本橋、かのお駒さんの色、品川に迷いまして、川さきざきの評判にも、あんないい女を神(かん)奈川に持ったなら、さぞほどもよし程ケ谷と」
と東海道尽くしでしゃれるので、奉行は
「その方、東海道を巨細(=詳しく)に存じおるが、生国はどこじゃ」
「へい、駿河のご城下で」
「うむ、ここな府中(不忠)者め」

まめは肝心

【RIZAP COOK】

【うんちく】

大岡政談の落語化

「今戸の狐」に登場した乾坤坊良斎が、大岡政談に白子屋事件をからめて創作した長編人情噺「白子屋政談」を落語化し、こっけい噺に仕立てたものです。

落語としての作者(改作者)は不祥ですが、「東海道五十三次」「名奉行」(または「評判娘」)「伊勢の壷屋の煙草入れ」という題での三題噺として作られたともいいます。

白子屋の悲劇

日本橋新材木町、稲荷新道の材木問屋、白子屋庄三郎の娘お熊は、母親お常の乱費のため傾いた店を立て直すため、持参金五百両を当てにした両親によって大伝馬町の大地主川喜田弥兵衛の番頭又四郎をむりやり婿に取らされます。又四郎は、身持ちが固いだけが取り得の、つまらない男。いやでたまらないところに、店の番頭で、渋い中年男の忠八にたらしこまれ、気がつけばお熊の腹はポコリン、ポコリン。これでは店の信用にかかわると、母親は、今度は又四郎を離縁して追い出そうとしますが、持参金がネックでそれもできません。そこで、女中二人に手伝わせ、ある夜、又四郎の寝首をかこうとして失敗。関係者はあえなく、全員逮捕されました。

名奉行大岡越前守さまのお裁きで、享保12年(1727)2月25日、「一審即決上告を許さず、弁護人これを付せず、審理は公開せず」の暗黒裁判で判決が下ります。母お常は殺人未遂の主犯で死罪。お熊と忠八は不義密通で死罪、磔。お女中二人は主殺し未遂で死罪、逆さ磔。父庄三郎は闕所。

23歳のお熊は絶世の美女で、引き回しで裸馬に乗せられ、千住小塚原の刑場に向かう途中、白無垢に黄八丈の小袖、首に水晶の念珠というなんとも色っぽい風情だったとか。

沿道を埋め尽くした野次馬連中。ああ、もったいねえと生唾ゴクン。これは、大岡越前が実際に裁いた数少ない事件で、その後、浄瑠璃「恋娘昔八丈」や、人情噺でのち黙阿弥の芝居にもなった「髪結新三」などに脚色され、今にその名を残しています。

志ん生から歌丸まで

明治期では、三代目春風亭柳枝(1851-1900)の、明治24年(1891)9月の速記が残ります。「白木屋」「お駒丈八」の別題があります。

東海道尽くしの言い立てが聴かせどころで、軽く、粋なパロディ噺なので、昭和に入っても名人連が好んで取り上げ、五代目古今亭志ん生、六代目三遊亭円生、三代目三遊亭金馬らがよく演じました。桂歌丸もレパートリーにしていました。

志ん生の豆尽くし

「東海道尽くし」と並んで、この噺は「豆尽くし」が眼目。豆はもちろん、女性自身の隠語で、五代目志ん生はこの部分だけを、艶笑小咄として、独立して演じていました。

これも志ん生が得意にした「駒長」で、「白子屋政談」の登場人物の名前が借用されています。

忘れがたい豆の味

【RIZAP COOK】

三方一両損 さんぽういちりょうぞん 演目

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柳原土手で金が拾った三両。ホントの意味はこういうことなんですね。

【あらすじ】

神田白壁町の長屋に住む左官の金太郎。

ある日、柳原の土手で、同じく神田堅大工町の大工・熊五郎名義の書きつけと印形、三両入った財布を拾ったので、さっそく家を訪ねて届ける。

ところが、偏屈で宵越しの金を持たない主義の熊五郎、
「印形と書きつけはもらっておくが、オレを嫌って勝手におさらばした金なんぞ、もうオレの物じゃねえから受けとるわけにはいかねえ、そのまま持って帰れ」
と言い張って聞かない。

「人が静かに言っているうちに持っていかないとためにならねえぞ」
と、親切心で届けてやったのを逆にすごむ始末なので、金太郎もカチンときて、大げんかになる。

騒ぎを聞きつけた熊五郎の大家が止めに入るが、かえってけんかが飛び火する。

熊が
「この逆蛍、店賃はちゃんと入れてるんだから、てめえなんぞにとやかく言われる筋合いはねえ」
と毒づいたから、大家はカンカン。

「こんな野郎はあたしが召し連れ訴えするから、今日のところはひとまず帰ってくれ」
と言うので、腹の虫が納まらないまま金太郎は長屋に引き上げ、これも大家に報告すると、こちらの大家も、
「向こうに先に訴えられたんじゃあ、てめえの顔は立ってもオレの顔が立たない」
と、急いで願書を書き、金太郎を連れてお恐れながらと奉行所へ。

これより名奉行、大岡越前守様のお裁きとあいなる。

お白州でそれぞれの言い分を聞いいたお奉行さま。

問題の金三両に一両を足し、金太郎には正直さへの、熊五郎には潔癖さへのそれぞれ褒美として、各々に二両下しおかれる。

金は、拾った金をそのまま取れば三両だから、都合一両の損。

熊も、届けられた金を受け取れば三両で、これも一両の損。

奉行も褒美に一両出したから一両の損。

したがって三方一両損で、これにて丸く納まるという、どちらも傷つかない名裁き。

二人はめでたく仲直りし、この後奉行の計らいで御膳が出る。

「これ、両人とも、いかに空腹でも、腹も身のうち。たんと食すなよ」
「へへっ、多かあ(大岡)食わねえ」
「たった一膳(=越前)」

【しりたい】

講談の落語化

文化年間(1804-18)から口演されていた古い噺です。講談の「大岡政談もの」の一部が落語に脚色されたもので、さらにさかのぼると、江戸初期に父子で名奉行とうたわれた板倉勝重(1545-1624)・重宗(1586-1656)の事蹟を集めた『板倉政要』中の「聖人公事の捌(さばき)」が原典です。

大岡政談

落語のお奉行さまは、たいてい大岡越前守と決まっていて、主な噺だけでも「大工調べ」「帯久」「五貫裁き」「小間物屋政談」「唐茄子屋政談」と、その出演作品はかなりの数です。

実際には、大岡忠相(おおおか・ただすけ、1677-1751)が江戸町奉行職にあった享保2年-元文元年(1717-36)に、自身で担当したおもな事件は白子屋事件くらいで、有名な天一坊事件ほか、講談などで語られる事件はほとんど、本人とはかかわりありません。

伝説だけが独り歩きし、講釈師や戯作者の手になった「大岡政談実録」などの写本から、百編近い虚構の逸話が流布。それがまた「大岡政談」となって講談や落語、歌舞伎に脚色されたわけです。

古い演出

明治の三代目春風亭柳枝は、このあとに「文七元結」を続ける連作速記で、全体を「江戸っ子」の題で演じています。

柳枝では、二人の当事者の名が、八丁堀岡崎町の畳屋・三郎兵衛と、神田江川町の建具屋・長八となっていて、時代も大岡政談に近づけて享保のころとしています。

また、長八が金を落としてがっかりするくだりを入れ、オチの部分を省くなど、現行とは少し異なります。

昭和に入って八代目三笑亭可楽が得意とし、その型が現在も踏襲されています。

召し連れ訴え

「大家といえば親も同然」と、落語の中でよく語られる通り、大家(家主)は、店子に対して絶対権力を持っていました。

町役として両御番所(南北江戸町奉行所)、大番屋などに顔が利いた大家が、店子の不正をお上に上書を添えて「お恐れながら」と訴え出るのが「召し連れ訴え」です。もちろん、この噺のように店子の代理人として、共々訴え出ることもありました。

十中八九はお取り上げになるし、そうなれば判決もクロと出たも同然ですから、芝居の髪結新三のようなしたたかな悪党でも、これには震え上ったものです。