しょうしんしょうめいけぶけちりん【正真正銘けぶけちりん】むだぐち ことば

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正真正銘間違いなし、混じりっけなしの本物というのを、江戸っ子特有の大げさな軽口で強調したものです。この後普通は「現金掛け値なし」と続けてダメを押します。

「けちりん」は「毛一厘」が縮まった形。否定、打ち消しをともなって「毛筋ほどの不純物もない」と、これも強調、アピール。「けぶ」は不明ですが、「九分九厘」のしゃれでしょうか。

現金掛け値なしは、元禄年間(1688-1704)に日本橋の三井越後屋呉服店が始めた画期的な新商法。一切の情実的な値引きをせず、公明正大に正札=正価のみで販売というもので、これが江戸のみならず全国的な評判を呼び、大繁盛。のちの大財閥の礎を築きました。転じて、「掛け値なし」が太鼓判、間違いなしという慣用語に。同様の表現は「金箔付き」「極め付き」「極印付き」「正札付き」など、さまざまです。

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じゃまにならのきむくろんじ【邪魔に楢の木椋ろんじ】むだぐち ことば

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一見すると「邪魔になる」というだけのむだぐち。「なる」と「なら」を掛けているわけです。何回か口に出して唱え、ことばのリズムを味わうと、自然にもう一つダジャレが隠れていることがわかります。「じゃまに」と「山に」です。

最後の「椋ろんじ」。これがなかなか難物です。辞書を引いてみれば、「むくろんじ」はムクノキ。落葉樹で、皮または実を煎じるとぶくぶく泡が出て、シャボン玉の液に。「茶の湯」で、隠居が煎茶の泡を出すのに、青黄粉といっしょにぶち込んだのが、これでした。木自体はなんの変哲もなく、「むくろ(ん)じは三年磨いても黒し」という諺から「進歩がない」ことのたとえでした。「あってもさして役に立たない、うどの大木」ということで「邪魔」とつなげたと思われます。

考えてみれば、ほとんど愚かしいダジャレばかりのむだぐちに、しかつめらしい解釈などは本来、ヤボの極み。遊び心という視点では、これはなにとなにを掛けて後にどうつなげているのか、謎解きのようなおもしろさがあるのもまた確かなのですが。そこで、引っかかった「椋ろんじ」について、木だけに掘り返してみます。以下は、筆者(高田裕史)の私見です。

結論をいえば、これは「むぐらもち」のダジャレ。あの「モグラ」のことです。ではなぜか。答えは、安政4年(1857)初編刊の滑稽本『妙竹林話七偏人』(梅亭金鵞作)に隠れていました。「山椒味噌まであればよい」と。

『七偏人』の主人公は七人の侍ならぬ七人の遊冶郎(=放蕩野郎)。なにかといえば七人が雁首そろえ、遊ぶことしか頭になし。この連中が好むのは茶番です。江戸中あっちこっちで野外芝居の趣向をこしらえ、最後にタネあかしで見物人をあっと言わせるのが生きがい。で、今日も今日とて、ああだこうだとむだぐちを叩きあいながら、相談に余念あリません。その一人、虚呂松(きょろまつ)が、演出に熱が入りすぎて腹が減ったと七輪で餅を焼き始めます。いわく「不器ッちやうに大きな網で、土俵のそとへ二、三寸はみ出すから」。……以下、「邪魔に楢の木」と、このざれぐち。この男、でっぷり太って大食い。キーワードは「餅」とわかります。そこで「むぐらもち」→「モグラ」は太っている人のたとえだと。おまけに「もち」が出ます。最後の「山椒味噌」。山椒の実が丸くてごろごろしているところから「ころり山椒味噌」。これも大食い、肥満の異称です。餅網が大きすぎ、七輪という土俵からふくれた餅がはみ出してコロコロリ。「味噌でもつけて食っちまおう」というところ。これで「むくろんじ」→「むぐらもち」のつじつまがどうにか合いました。

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しかられたんぼのしいなぐさ【叱られ田圃のしいな草】むだぐち ことば

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叱られてしょげているようすをからかったむだぐちです。同じ形のしゃれに「心得たんぼ」があり、ともに語尾の「た」を「田んぼ」と掛けているだけ。

「しいな草」は萎れて実の入っていない草木や籾殻で「しおれ草」とも。落ち込んでいる精神状態を萎れた草にたとえたものです。

もう一つ、田んぼの「ぼ」は「坊」を効かせた可能性があります。そうなると「叱られん坊」「叱られた子供(男の子)」の意味が加わることになります。

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たまげたこまげたあずまげた【たまげた駒下駄東下駄】むだぐち ことば



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たまげた(=肝をつぶした)というのを、「げた」から駒下駄、東下駄と下駄尽くしでしゃれただけです。

脚韻を「げた」でそろえていて、口にするといいリズムです。

駒下駄は、爪先部分が馬蹄のように丸くなっているもの。音が色っぽいところから、吉原通いの通人などにも好まれました。

東下駄はご婦人用で、畳表を張った薄歯の履き物。寛永年間(1624-44)に吾妻という花魁が履き始めたところから、こう呼ばれました。

江戸時代後期には、もっぱら色里の女や、男でも遊び人だけが履くものとされました。

別名日和下駄。

晴れた日専用の下駄で、永井荷風の同名の東京探訪ルポ『日和下駄』でも知られています。

しゃれフリークの筆者(高田)としては、これだけでは物足りないので、「たまげた、こまった、ひょろげて(→ひよりげた)おつむ(→あずま)をぶっつげた」とでも悪ノリしておきます。

【語の読みと注】
馬蹄 ばてい
日和下駄 ひよりげた



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しからばごめんのこうむりばおり【然らば御免の蒙り羽織】むだぐち ことば

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武士の武張ってする「然らば御免をこうむって=それでは、お言葉に甘えて失礼いたす」という挨拶を芝居などで町人が覚え、むだぐちにしたもの。気取った言い回しなので、将棋の対局中にも酒の席でも使われたでしょう。

推測ですが、「こうむり」は「かぶり」に転化し、羽織を含め、着物をはしょって頭から被るラフな着方があるため、最後に羽織を出したのかもしれません。

もう一つ、「かぶる」は「かじる」の意味の同音異義語があるので、そこから「歯」→はおりとしゃれたというのはどうでしょう。いや、いくら何でもむだぐちでそこまで考えてはいませんね。ことばというのは生き物ですから、人が意図しなくても、自然に暗号めいた符合が付いてしまうことが、よくあるものなので。

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さましてたんとおあがり【冷ましてたんとお上がり】むだぐち ことば

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わざとらしくおだてられたとき「なんとでもお言い、せいぜい冷やかしなさい」と拗ねた言い返し。

本気でむくれている場合と、からかっちゃあいけねえと多少照れて言う場合があります。「冷やかすな」の逆表現で、「茶でも酒でも冷やしてお飲み」というアイロニー。これは天明期(1781-89)ごろの、遊里の色模様を扱った洒落本によく出典が見られるので、やはりそちら方面の通言が出自でしょう。いかにも、客か花魁が痴話げんかのときに使いそうなむだぐちです。

「茶にする」「酒にする」は、茶化す、からかう意味があり、「冷ます」自体にも「けなす」「悪く言う」という用例があるので、かなり微妙な思惑も含まれていそうです。第二の意味として、惚気けられたときに「ごちそうさま」と突き返す意味でも使われました。別表現に「冷まして食え」などがあります。

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さんすけまったり【三助待ったり】むだぐち ことば

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三助は、湯屋の窯焚き、または商家に雇われた飯炊きの奉公人。ともに火を扱う仕事だけに、バタバタしやすいことから、「そんなにあわてず、落ち着いて待ちなさい」という意味の日常語となったものです。そこからニュアンスを違えて「おっと待った、そうはさせない」とも。

こちらは将棋で、相手を牽制するむだぐちになるでしょう。寛政年間(1789-1801)ごろの流行語です。元は「三助舞ったり」で、これは、からくりの玩具で獅子を舞わせるときの掛け声。「獅子の洞入、洞返り、三介舞(待)ったり三介舞(待)待ったり」などと囃すもの。これはお座敷芸でしょうが、大道芸の可能性もあり、どちらかはよくわかりません。この掛け声自体、からくりの獅子がふらふら危なくて落ちそうなので、落ち着けということで「待ったり」と掛けているのかもしれません。

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しかたなかばしかんだばし【仕方中橋神田橋】むだぐち ことば

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「しかたがない」というのと、江戸の中橋を掛けたダジャレ。橋づくしで調子を整えるため、神田橋を出したものです。

中橋は、江戸時代初期まで、日本橋と京橋の中間に掛かっていた橋。中央区日本橋三丁目と京橋一丁目との境、中央通りと八重洲通りが交差するあたりといわれますが、明暦年間(1655-58)にはもうなくなっていました。その記憶だけが長く残り、もうとっくに「ない」というところから、「おぼしめしは中橋か」「気遣いは中橋」など「ない」というしゃれによく使われました。

江戸歌舞伎の始祖、中村勘三郎座が寛永元年(1624)に初めてこの橋のたもとで興行したことでも知られます。

神田橋の方も、「なんだかんだでしかたがない」というしゃれが考えられますが、さすがにうがち過ぎかも。むしろ勘三郎の「勘」と神田の「神」のしゃれを考えた方がまだましそうです。「しかたない」のほかのむだぐちでは、「仕方(地方、じかた=田舎と掛けた)はあっても親類がない」などがあります。

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さらになしじのじゅうばこ【更に梨地の重箱】むだぐち ことば

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「まったくない」「さらさら(さらに)」ない」のしゃれです。状況によっては、「(その気は)まったくない」と、すっとぼけて否認するニュアンスにもなりそうです。

ことば遊びとしては、まず「皿」と、強い否定を導く副詞の「さらに」を掛け、皿から梨皿で「梨」を、梨から「無し」としゃれの連鎖。

さらに、梨からダメ押しで梨地の蒔絵の重箱を出したもの。梨地は、梨の実の表面を模し、細かい点を散らした模様。金と漆を用いた豪華な重箱に珍重されるデザインです。

そこから「重箱の隅をつっついても、なににも出ない」となります。もう一つ、「重箱」には、遊里の隠語で、「幇間と芸者が花代や揚代を二重取りしてだまし取る」意味も。そこから「重なる」という意味を効かせ、「さらにさらに」という否定の強調をも付け加えています。

むだぐちもこうなると、なんとも凝りに凝った言葉のタペストリーになりますね。これでとぼける意味を加味すると、またまた「梨」から「木」→「気」のしゃれが加わり、「蒔絵」からは「まく」=だます→重箱=横領へと、際限なくことばのラビリンスが広がります。

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きたりきのじや【来たり喜の字屋】むだぐち ことば

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「ほいきた」「待ってました」というおちゃらけ。「来」と「喜」、さらにおそらく「気」も掛けていて、遊客が、惚れている芸者やお女郎がやっと来たので、「やれ嬉しや」というところ。

「喜の字屋」は、吉原で仕出し料理屋の総称だったので、貸し座敷で料理を待ちかねた心あったでしょう。この屋号は同時に、江戸三座の一つである守田座の座主、守田勘弥の屋号でもありますが、関係ははっきりしません。

「き」「き」という頭韻を踏んだ、リズムのいいしゃれたことばですね。似たむだぐちに「来たり喜之助」があリます。その名に特別な意味はなく、「き」の韻を整えるだけのもの。この名はさまざまに転用され、天明5年(1785)刊の黄表紙『江戸生艶気樺焼』の北利(北里)喜之助、落語では「九州吹き戻し」の、名前もそのままの「きたり喜之助」が知られています。「待っていた」という意味のむだぐちはほかに「来たか越後の紺がすり」「北山の武者所」など。

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きがもめのおふじさん【気がもめのお富士さん】むだぐち ことば

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「気がかり」の意味のしゃれことば。「きがもめ」と地名の「こまごめ」を掛けているだけです。

「お富士さん」は駒込富士神社(文京区本駒込)のこと。江戸時代には富士信仰のため登山する「富士講」が組織されていました。実際に富士詣りに行けない善男善女のため、最初、本郷の地に富士の形を模した築山を築き、富士山本宮浅間大社(静岡県富士宮市)から木花咲耶姫を勧請して創建。これが戦国末期の天正元年(1573)のことでした。

その後、寛永5年(1628)ごろに現在地に移転して、今も参詣が絶えません。別にやはり駒込の、八百屋お七で名高い寺を出して「気がもめの吉祥寺」とも。つまり、語呂がよければなんでもよかったわけ。

「安芸の宮島廻れば七里」で参照した出典は、天保10年(1839)初編刊の人情本『閑情末摘花』」(松亭金水作)。その中で、「安芸の……」に続けて、情夫との仲が冷えるのを心配したお女郎が「気がもめのお富士さんざますよ」とこぼすセリフがありました。ご参考まで。

【語の読みと注】
木花咲耶姫 このはなさくやひめ
閑情末摘花 かんじょうすえつむはな
松亭金水 しょうていきんすい

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きみょうちょうらいやのわかだんな【奇妙頂礼屋の若だんな】むだぐち ことば

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「奇妙」は現代語のニュアンスとは少し異なり、「不思議な」「珍しい」「趣があっておもしろい」の意。「奇妙頂礼」は仏教用語の「帰命頂礼」の洒落で、こちらの原義は仏に心から帰依すること。そこから、信仰の証の唱え文句となったもの。

したがって俗語化した「奇妙頂礼」も、「恐れ入った、感服」のニュアンスが強くなります。それに「若だんな」と付けておどけ、ダメ押しに「よっ、妙で有馬の人形筆ェ!」などと囃したりもしました。

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かっちけなしのみありのたね【忝け梨の実ありの種】むだぐち ことば



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「かっちけなし」は「かたじけなし」の江戸なまりで、「ありがたい」の意。語尾の「なし」を梨の実に掛け、さらに、梨が「無し」に通じて忌みことばなので「有りの実」と呼ぶことから「ありがたい」としゃれています。

最後の「種」は「実」の縁語でダメを押したもの。単なる感謝の意味を、二重三重に言葉遊び化して茶化しているところに、江戸東京人のシャイさが伺えます。

同義の表現に「忝なすびの香の物」「忝なすびの鴫焼き」があります。こちらは「なし」を茄子とその料理法に掛けた洒落ですね。

【語の読みと注】
忝い かたじけない
鴫焼き しぎやき



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おみかぎりえじのたくひのよはもえて【お見限り衛士の焚く火の夜は燃えて】むだぐち ことば

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お見限りはご無沙汰、お見捨ての意。それを、平安時代に禁中の諸門を警備した「御垣守」の衛士(兵士)と掛けています。

「焚く火の…」以下は、この衛士が夜通し松明を焚いて詰めたことから。10世紀末成立の「蜻蛉日記」に「火などちかき夜こそにぎははしけれ」「衛じのたくひはいつも」とあるのが元ネタ。

実は「お見限り」は、馴染みの遊郭に不義理をし、しばらくぶりに登楼した客に、皮肉混じりに言われる言葉。だからこそ、その夜の「火は燃えて」は、何やら意味深長なわけですが。

と書いてきましたが、じつはこの歌、「百人一首」のうちの一首です。江戸時代には『徒然草』と「百人一首」はかなり幅広い階層に共有された教養だったので、落語でもよく引き合いに出されます。

御垣守 衛士の焚く火の 夜は燃え 昼は消えつつ ものをこそ思へ

詞花集 大中臣能宣

皇居の御門を守る警護の者の焚くかがり火が夜は燃え昼は消えるように、私も夜は興奮勃起して昼はぐんにゃり萎えて心は物思いをすることだ。かがり火に、恋に身を焦がすわが身を重ねて詠んでいるところがミソです。

【語の読みと注】
御垣守 みかきもり
衛士 えじ
大中臣能宣 おおなかとみのよしのぶ
詞花集 しかしゅう

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おっとよしべえかわのきんちゃく【おっと由兵衛革の巾着】むだぐち ことば

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今でもたまに使われる「おっと合点承知之助」と同じで、「よしわかった」「万事呑み込んだから心配ご無用」の意味。

由来は歌舞伎種で、「良し」と梅の由兵衛(大坂の侠客)を掛けたものです。由兵衛は本名を梅渋由兵衛といって、元禄2年(1689)に大坂千日前でお仕置きになった殺人犯。これをモデルに並木五瓶が書いて、寛政8年(1796)に俗称『梅の由兵衛』として劇化されました。主人公が女房小梅の弟長吉を殺し、革の巾着を奪う場面に掛けて洒落ています。

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いのちをとびたのいしやくし【命を飛田の石薬師】むだぐち ことば

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これは飛田という地名から、上方種のしゃれで、ただ「命が飛んだ」→「命を落とした」の意味に過ぎません。

『新版ことば遊び辞典』(鈴木棠三編)によれば、由来としては元禄年間(1688-1704)刊の『好色由来揃』にある故事からだそうです。

それによると、物乞いの拾った財布を横取りしたお女郎が、その報いで辱めを受け、それを恥じて飛田(大阪市天王寺区)の石薬師に願をかけて後生を祈り、ついには断食して餓死した、ということです。悲しい話です。

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ききにきたののほととぎす【聞きに北野の時鳥】むだぐち ことば

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「時鳥の声を聞きに来た」というのと、北野の天満宮の「北野」を掛けたしゃれに過ぎません。「聞き」は、動詞の連用形が名詞化して「評判」という意味もあるので、「北野で名高い時鳥の噂を」という意味も含んでいるでしょう。

北野天満宮(京都市下京区)旧一ノ保社(いちのほしゃ)は、かつて時鳥の篇額を掲げていたため、「時鳥天満宮」の異名、「安楽寺天満宮」と称されて、神仏習合の施設でした。寺と神社のごちゃまぜです。天神社の縁起によると、北野の神殿には木彫りの時鳥があり、いつも奇声を上げていたとか。

一の保社の社殿が全焼した文安元年(1444)の「麹騒動」の際、木彫りの時鳥が梢に止まって鳴くという奇譚がありました。麹騒動とは、麹づくりをなりわいとする同業者の仲間の権利を巡るひともんちゃく。この権利の仕切り役は天満宮の北野神人でした。神人(じにん)とは神社で働く人。麹室での麹づくりにからむ免税や独占製造権など、ここは金づるでした。応永26年(1419)、幕府は北野神人に麹づくり特権を認めていました。以来、別当の安楽寺が神仏分離令で明治元年に廃寺となるまで、時鳥の扁額は火災、疱瘡除けの霊宝とされ、毎年旧暦6月15日にかぎって開帳されていました。

まあ、以上、なんだか要領を得ない話ですが、時鳥がこの社の特別な名物だった由来は、なんとなくわかります。北野天満宮ですから梅が名所。梅にうぐいす、といきたいところなのに、ここはほととぎすとなります。

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おかしいのみがひとふくろ【おか椎の実が一袋】むだぐち ことば

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これも単なるダジャレで、「おかしい」の「しい」と、椎の実とを掛けたに過ぎません。

椎の実(どんぐりの実)は、今では虫が湧くというので、ほとんど食用にはしませんが、貧しく飢えていた江戸時代の子どもたちには恰好のおやつでした。黒文字で「しいのみ」と書かれた袋に入れ、「たんばほおづきしいのみひとふくろしもん(丹波鬼灯椎の実一袋四文)」と呼ばわって売り歩いていたそうです。

したがって、これは、子供の遊びの中から生まれた慣用句とみていいでしょう。

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きんのしたにはふのくだゆう【金の下には歩の九太夫】むだぐち ことば

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これもまた将棋のむだぐち。「寝返ったな」という意味が込められています。「歩の」から「斧九太夫」の「おの」に掛け、縁の下から覗く寝返った九太夫のさまを「金の下」に掛けているのですが、忠臣蔵のこの段がわからないと、まったく意味不明な難解むだぐちになって、使いようもありません。意味そのものはあらかたのむだぐち同様、たいしたものではありません。

『仮名手本忠臣蔵』の「七段目 祇園一力茶屋の場」で、敵の高師直方に寝返った、もと塩冶家の次席家老、斧九太夫。大星由良之助が遊蕩にふけっている祇園の茶屋に、その真意を探るべく潜入してきます。その九太夫、縁の下に隠れ、大星の手紙を盗み見。その場面で義太夫が語る、「縁の下には九太夫が、くりおろす文、月かげに、すかし読むとは神ならず、ほどけかかりし、おかるがかんざし」という章句のもじりがこれです。

なので、この場合、自分の金の後ろにあるのは、敵がパチリと投入した、「寝返った」歩なのでしょう。

【語の読みと注】
斧九太夫 おのくだゆう
大星由良之助 おおぼしゆらのすけ
塩冶 えんや
高師直 こうのもろなお

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きんかくではいけんならばいいつてがある【金角で拝見ならばいい伝手がある】むだぐち ことば

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金閣寺と金角のしゃれ。

毎度おなじみ、将棋のむだぐち。

金と角で攻めている(または攻められている)ときのものか、あるいは「拝見」から、手駒を見せてくれと言われた場合の反応か、具体的に詳しい状況は不明です。

元は『仮名手本忠臣蔵』九段目「山科閑居の場」の、大星の女房お石のセリフそのまま。

娘の小浪を、婚約中の大星の嫡男力弥と祝言させる談判に、はるばる鎌倉から訪ねてきた加古川本蔵の後妻、戸無瀬。

応対に出たお石はもとよりその気はなし。

はぐらかすように親切ごかしに「祇園清水知恩院、大仏様ご覧じたか。金閣寺拝見ならば、よい伝手があるぞえ」。

ということで、戸無瀬ともどもお疲れさま。

金角のむだぐちはほかに「金閣寺の和尚さま」「金角寺の和尚さま」などがあります。

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かくなりはつるはりのとうぜん【角なりはつるは理の当然】むだぐち ことば

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「かく=このように」と駒の角を引っ掛けた将棋さしのむだぐち。「やっぱり、角が龍馬に成ってしまったか」というくらいの意味。

これは成った方か成られた方か、どちらのことばとも取れます。角に掛けた将棋のむだぐちは多く、「角なるからは是非もなし」「角なり果てる身の因果」「角道の説法屁一つ」など。最後のは「百日の説法屁一つ」のもじりで、たった一手のミスが命取りという勝負事の怖さ。

もう一つ、「角とだにえやは伊吹のさしも草」。これは藤原実方朝臣の「かくとだにえやは伊吹のさしも草さしも知らじな燃ゆる思ひを」の上の句をそっくりいただいたもの。「さし=指し」で、相手がそう来るとは知らなかった、という意味でしょうが、これは和歌の知識がないと言えないかもしれません。「百人一首」の一首です。

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かまわずともよしのくず【かまわずとも吉野葛】むだぐち ことば

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桜の名所の「吉野」と「よし=かまわない」を掛けたしゃれで、ご当地のもう一つの名産の葛粉を付けています。かまわないからほっておいてくれ、の意味。

「吉野葛」の代わりに「吉野木」とも。どちらも出典は明和7年(1770)刊の洒落本『遊子方言』なので、出自は遊里からでしょう。もっとおどけて「おっとよしの木かしわの木さるすべり」と言うことも。「吉野」が付くことばは無数にあるので、類似の言い回しはもっと多いかも知れません。吉野の縁では、「青菜」の「義経にしておけ」も同意。「かまわず」のしゃれの方は、上野の不忍池をもじった「かまわずの池」があります。

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おそれいりやのきしぼじん【恐れ入谷の鬼子母神】むだぐち ことば

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現代でも辛うじて生き残っていて、もっとも有名なむだぐちでしょう。「恐れ入りました」と地名の「入谷」を掛け、そこから現地の鬼子母神を出したもの。

ここでは雑司が谷のそれではなく、台東区入谷町の喜宝院の鬼子母神堂。それでなければダジャレが成り立ちません。「恐れ入り」のしゃれはこのほかにも数多く、「入相」「煎り酒」「入谷の七合神」「入山」「入山形」「入山三了」「恐れ久松」「恐れ山猫」「恐れちゃんちき茶の袴」と、あげたらきりがありません。

最後に極めつけは、安政4年(1857)初編刊、梅亭金鵞の滑稽本『七偏人』から。「大酩酊に及んで、恐れ入谷の霜のもみぢば真赤にならの八重桜、池田いたみのお酒の香りが、京九重に匂ひぬるかなッ」。なんともはや。

私が子供の頃にはやったアメリカのテレビドラマ『0011 ナポレオン・ソロ』に相方で活躍するイリヤ・クリヤキン役のデビッド・マッカラムが女性にすごい人気でした。「恐れいりやのクリヤキン」などと地口ってました。

むちゃくちゃかっこいい

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かかとがずつうやんであたまへせんきがのぼる【踵が頭痛病んで頭へ疝気がのぼる】むだぐち ことば

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とうていあり得ないことをコミカルにむだぐちにしたもの。

不可能を表すたとえは「煎り豆に花」「石が流れて木の葉が沈む」などがありますが、なんでもありのご時節、踵が頭痛病むくらいでなければ、誰も驚かないでしょう。

五代目古今亭志ん生の小咄に、胴と足が別々のところに奉公して……というのがありますが、落語こそ、動物はおろか、ナマ首まで口をきき、自分の頭の池に飛び込む異次元世界です。

ちなみに、西洋ではこういうのを「奇蹟」と呼びます。『ノートルダム・ド・パリ』でビクトル・ユゴーが描く15世紀のパリには「奇蹟通り」と呼ぶ怪しげな一角がありました。そこでは、日が落ちると必ず「奇蹟」が起こり、歩けない人が駆け出し、目が見えない人がぱっちり目を開きます。それからみんなそろって追い剥ぎに「変身」するわけですが。もっとも、もうひとひねりして、「足が目を開け目が走り出す」くらいでないと、このむだぐちのレベルには達しません。

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おいてくりおのまんがんじ【措いて栗尾の満願寺】むだぐち ことば

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文語で「措く(おく)」にはさまざまな意味がありますが、基本的には「放っておく」「やめておく」に大別されます。それに命令形、または依頼形が付いて「やめてくれ」「かまうな」の意味。「それはこっちにおいといて」という「おく」も同じでしょうか。

江戸では伝法に「ええ、おきゃあがれ」とも。

芝居では「おかっせえ」と古風になリます。それをむだぐちにしたのが本項。といっても、これは長野県のローカル限定で。「おいてくれ」のことば尻に地元の名刹の山号を付けてしゃれています。栗尾山満願寺は、長野県安曇市にある、聖武天皇の神亀2年(725)ごろ創建という古刹。その後、新義真言宗豊山派の寺院となり、今では地獄極楽図とつつじ公園が有名です。

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かんじんかしまのかなめいし【肝心鹿島の要石】むだぐち ことば

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慣用句の「かんじんかなめ」をしゃれたもの。

もっとも大切な要点という意味です。

鹿島の要石は、常陸国の一宮、鹿島神宮の境内にある神石。

「肝心春日」という異名もあり、地震の鎮め石と言われます。

おそらく、大鯰でも封じ込んでいるのでしょう。

意味自体は、名所古跡を洒落に織り込んだだけの単純なものですが、「か」の頭韻を重ねたリズムは耳に快く、これぞむだ口の真髄でしょう。

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おもちょうじちゃぎつねのかかとちゃんぎり【面丁子茶狐の踵ちゃんぎり】むだぐち ことば

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「おもしろい」のむだぐちですが、はるかに長ったらしく凝っています。「面白狸の腹鼓」の言葉をどんどん変化させたもの。まず白を丁子茶(紅色がかった茶色)に、狸を狐に、腹を踵に置き換えています。最後の「ちゃんぎり」は、リズムを出すためのお囃子、口拍子で、当たり鉦の異名を付けたもの。

当たり鉦は、江戸時代、願人坊主などが用いた小型の鉦。左手に持った鉦を右手の棒でこすって音を出し、托鉢して歩きました。転じて歌舞伎の下座音楽にもなり、「ちゃんぎり」はその陽気な音色から。似た言い回しに「面黒狐の腹鼓」があります。これは機械的に白を黒、狸を狐にしただけですが、腹鼓を打つはずのない狐を持ってくることで、不釣り合いな滑稽さがより際だちます。

【語の読みと注】
当たり鉦 あたりがね

★auひかり★

おもえばくやししもんじゅのしし【思えばくや獅子文殊の獅子】むだぐち ことば

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「くやしい」とだけ言えば済むものを、言葉尻の「しい」から「獅子」を掛け、延々と言葉遊びにしています。

文殊は知恵を司る菩薩。獅子に乗っているという伝承があるので、こう付けたもの。これも、将棋で負けたときのくやしまぎれのむだ口かもしれません。この後さらにおふざけで「トッピキピイの角兵衛獅子」と続けることも。こうなるともはやヤケのヤンパチで、芸者などが嫉妬のあまり、やけ酒をあおって毒づくようすが想像できます。

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おちょうしのごもんつき【お銚子のご紋付き】むだぐち ことば

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「ちょうし」は「銚子」と「調子」を掛けています。ふだん言うことを聞かない子が、たまに客が来たときだけ、妙にいい子ぶって手伝いなどしたがるのはよくあること。それを親が冷やかす言葉。まあ、小遣い目当てでしょうが、外面ばかりで調子のいいことと、客に出すお銚子を掛けています。

「ご紋付き」も、客を招いた改まった席の象徴に付けたもの。からかう調子の裏に、今からこんなジキルとハイドじゃ、将来が思いやられるという親のため息が聞こえますね。

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おじゅんでんべえはやまわし【お順伝兵衛早回し】むだぐち ことば

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江戸時代、酒席でよく使われた洒落。「お順に早く盃を回しましょう」の意味で、浄瑠璃「近頃河原達引」の登場人物「お俊伝兵衛猿回し」をもじったもの。

通称「お俊伝兵衛」は天明2年(1782)ごろ初演で、井筒屋伝兵衛と京都先斗町の近江屋抱えの遊女お俊の心中と、猿回し与次郎の孝行物語をからませています。お俊の「そりゃ聞こえませぬ伝兵衛さん」の悲痛なセリフは有名で、明治大正までは誰もが知っていました。

昭和初期、衆議院議員の堀切善兵衛が代表質問に立ったとき、小声で聞き取れなかったので、すかさず議場から「そりゃ聞こえませぬ善兵衛さん」とヤジが飛んだという逸話があります。かつては政治家でも粋でした。

【語の読みと注】
近頃河原達引 ちかごろかわらのたっぴき

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