あやうくおそまきとうがらし

地=地元=お江戸

成城石井

すんでのところで間に合った。

時機をはずして遅れて蒔いたために、唐辛子の辛味がなくなったり、気が抜けていたりするものだが、ああ、なんとか大丈夫だった、というくらいの意味。

なにかで間に合わなくなりそうなときに。でも、間に合ったときに。

大河『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK)の第7回(2025年2月17日放送)で、蔦重が地本問屋の寄り合いに、新刊の吉原細見『籬の花』を背負ってやってきた場面で発していました。前代未聞の新刊を仲間たちが見て、あっと驚くシーン。

こういうことばを地口と言います。地口の地とは地元、つまりは江戸のこと。江戸の洒落ことば、ということです。地本の地も地元、つまりは江戸のこと。江戸の本をさします。

ともに、地=地元=お江戸。そういう意味が込められてあるのですね。

なぜ唐辛子なのか。

唐辛子は熱帯性の植物のため、温帯の日本では種蒔きのタイミングをはずすと間抜けな唐辛子ができるからです。

鈍感な人や間抜けな人が機を逸するような場面で、彼の行為を笑うように使ったりします。

成城石井

落語あらすじ事典 千字寄席編集部

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