【けっこう毛だらけ猫灰だらけ】

けっこうけだらけねこはいだらけ

意味は、「よいね」と言っているだけ。

けっこう毛だらけ灰だらけ

最初はこれだけで、「猫」は入っていませんでした。いつ、どうして入ったのかは知りません。フーテンの寅さんからでしょうか。

「けっこう」の「け」から「毛だらけ」と語呂を合わせて、「毛だらけ」の連想から「猫」を出してきて、「灰猫」を意味する「猫灰だらけ」でつなげています。

昔は、かまどの火が消えると、猫がそのぬくもりを求めてかまどの灰の中に入り込んで暖を取るものでした。それを「灰猫」と呼び、冬の季語でもあったのです。

「けっこう毛だらけ猫灰だらけ」は、映画の寅さんの啖呵売の口上にあったことで、全国的に有名になりました。日本でいちばん知られたしゃれことばではないでしょうか。

啖呵売は、香具師がものを売る際のキャッチ―な口上です。これがリズミカルでおもしろくて、魅力です。たとえば、こんなかんじ。

英語の教科書の啖呵売

さて、いいかね、お客さん。角は一流デパート、赤木屋、黒木屋、白木屋さんで、紅おしろいつけたおねえちゃんから、くださいちょうだいでいただきますと、五千が六千、七千、八千、一万円はする品物だが、きょうはそれだけくださいとは言わない。いいかい。はい、並んだ数字がまず一つ。もののはじまりが一ならば、国のはじまりが大和の国、島のはじまりが淡路島、泥棒のはじまりが石川五右衛門なら、スケベエのはじまりがこのおじさんっての。笑っちゃいけないよ、スケベエってわかるんだから、目つき見りゃ、ね。

続いた数字が二だ。ほら、二冊こうやってまけちゃおう。にいさん寄ってらっしゃいは、吉原のカブ、仁吉が通る東海道、日光 けっこう 東照宮、憎まれ小僧ができないように、教育資料の一端としておまけしましょう、もう一冊。

三。産で死んだが、三島のおせん、おせんばかりがおなごじゃないよ。京都は極楽寺坂の門前で、かの有名な小野小町が、三日三晩飲まず食わずに野垂れ死んだのが三十三。とかく、三という数字はあやが悪い。三三六歩で引け目がない、というね。

どう。まかった数字が四つ。ほら四冊目。四谷、赤坂、麹町、チャラチャラ流れる御茶ノ水、粋な姐ちゃん立ちションベン。白く咲いたが百合の花、四角四面は豆腐屋の娘、色は白いが水くさい。

ね、どう。一度変われば、二度変わる、三度変われば、四度変わる、淀の川瀬の水車、たれを待つやらクルクルと。ゴホンゴホンと浪さんが、磯の浜辺で、ねえあなた、わたしゃあなたの妻じゃもの、妻は妻でも阪東よ、ときやがった。

つづいた数字が六つ。ロクだ。昔、武士の位を禄という。後藤又兵衛が槍一本で六万石。ロクでもないガキができちゃいけない、というんで教育資料の一端としておまけしましょう、この本。

どう。七冊目。七つ長野の善光寺、八つ谷中の奥寺で、竹の柱に茅の屋根、手鍋下げてもわしゃいとやせぬ、信州信濃の新ソバよりもわたしゃあなたのそばがよい。あなた百までわしゃ九十九まで、ともにシラミのたかるまで、ってやつ。

どう。ね、ほら。これで買い手がなかったら、あたし、浅野内匠頭じゃないけど腹切ったつもり。え、ダメか。チキショウ、ったくねえ、今日はしょうがねえ、貧乏人の行列だあ。まあいいよ、いいって、いいって、帰んなさい、帰んなさい。

はあ、ははは。みんないなくなっちゃったねえ。どう、おじいちゃん。ええ。じっと見てっけど、お孫さんに持ってきたいんだろ、これ、ね。いくら見てたってダメ。いくら見てたって、買わなきゃ。ね、そうでしょ。ね、いくら掘っても畑にゃ、ハマグリ出てこないっていうじゃないの、どう。

田へしたもんだよ、蛙のしょんべん。見上げたもんだよ、屋根屋のふんどし、ってね。

はい、どう。 はい、どうです。見ていただきましょう。先ほど説明しちゃったの、これだけお安くまけちゃうよ。なぜこんなにお安い品物のかというとね、本来ならば、これ輸出する品物なんですよ、あんた。なんで輸出ができないかというと、はっきり言っちゃおう。今まで言わなかった。わたくしが知っている東京は花の都、神田は六法堂という大きな本屋さんが、わずか百五十万円の税金で泣きの涙で投げ出した品物。だから、こんなに安い。

本来ならば、文部省選定。衛生博覧会ご指定。大変な品物だ、これ。これだけ安く売っちゃう。

ね。 英語の本なんか見てごらんなさい。英語。ずーっと買いてある。ね。もっとも、わかりやすいよ。この英語、見てごらん、わたしだって読める。どう。エヌ・エイチ・ケイにマッカーサー、メンソレタームにデーデーテー。こういう、昔の古い英語から出てるんだから。買ってちょうだいよ、どーお。ね。

『続・男はつらいよ』(1969年11月15日公開、マドンナは佐藤オリエ)

落語あらすじ事典 千字寄席編集部

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