【椿萱並茂】

ちんけんへいも

両親が元気


成城石井

「椿」と「萱」がともに茂れる状態。転じて、父と母が健在。

「椿萱並び茂る」と読みます。

「椿」は日本のツバキではありません。伝説上の「大椿」という巨木は、八千年を春とし、八千年を秋とするといわれるとてつもないもの。霊木です。これを父親に見立てます。

「萱」は、母親のいる北堂の庭に憂いを忘れるといわれる「萱草=忘れ草」を植えるならわしから、母親に見立てます。

「椿萱」は父と母になります。それが「並茂」、つまり繁栄するわけですから、両親がともに健康でいることをしめします。

ちなみに、「萱草」は、中国では、女性の近くに置いておくと男子を身ごもるといわれ、奥さんがいる北堂に植えたとされています。

「萱」の読みと意味は、①わすれぐさ。ユリ科の多年草。「藪萱草やぶかんぞう」「椿萱」「萱堂けんどう」。 ②かや。ススキ、スゲなど屋根をふくイネ科、カヤツリグサ科の植物の総称。「刈萱かるかや」「茅萱ちがや」。

ちなみにこの「椿萱並茂」、過去40年間の読売新聞の記事では一度も使われていません。つまり、日常生活であんまり使われていない、ということですね。残念な故事成語です。

幼い頃は「ちん」とか「まん」とか「へい」とかの音がどこかコミカルに感じたものでしたか、不思議な語感を呼び覚ましてくれたものです。


成城石井

落語あらすじ事典 千字寄席編集部

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