あいさつ【挨拶】川柳 ことば

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あいさつに女はむだな笑ひあり  二05

いつも笑顔の女性は愛敬があるとされて世間では高評価なのですが、「むだな笑ひ」とはうわべだけの笑いや心にもない笑いのことで、この句はどうやら、飾ったり偽ったりの笑いはよろしくない、と暗に言っているようです。

「女は愛敬」が当たり前の、江戸の価値観による句です。

前だれでふきふき内儀おかみあいさつし  宝十三松03

あいさつを内儀はくしで二ツかき  一34

あいさつに困りかんざし差し直し  五22

ちょっとした義理は天気の噂なり  三十七38

世間とどうつきあっていくか。そんなとき、「笑ひ」ばかりか、さまざまな所作が緩衝材になったりちょっとした手助けになったりしてくれるんですね。いまも同じでしょう。

ちなみに、「挨拶」は仏教語、しかも禅語です。『碧巌録』に載っています。「挨」はおす、「拶」はせまる。師僧と弟子との禅問答の応酬を意味し、これを何度も何度も繰り返します。だから、コミュニケーションの手始めを意味するようになったのですね。どこか厳しさが込められたことばなのですがね。

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あいきょう【愛敬】川柳 ことば

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「あいきょう」は「愛敬」「愛嬌」と記すことが多いようです。「接すると好感を催させる柔らかなようす」「見て(聞いて)笑いを覚えさせる感じ」といった意味合い。その人がもつ雰囲気をさします。似たことばで「愛想」がありますが、こちらはその人の行為からの印象で、「愛敬」とはちょっと異なります。

もとは仏教語の「あいぎゃう」で、「愛敬(愛嬌)」は「あいぎょう」と濁っていましたが、どうしたわけか、室町期以降、「あいきょう」と清音となります。

愛敬はこぼれてへらぬ宝也  六十一29

愛敬はこぼれるもので、減るものでもないのでいくらでも。若い女へのご教訓めいた句でしょうか。愛敬は人柄にも通じるようで、悪からぬ印象です。

愛きゃう娘そこからもここからも  十三10

「そこからもここからも」は縁談をさしているのですね。川柳は言外を察する気働きがないとわからないものですが、これも江戸の空気というもの。

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