【他山の石】

たざんのいし


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「詩経」のことば。

「他山の石もって玉をおさむべし」

よその山から出た粗悪な石も自分の宝石を磨くのに使える。転じて、他人のつまらない言行でも自分を磨く参考になる、という意味。

石=凡人、玉=賢者または君子。たとえているのですね。

ですから、他人のりっぱな原稿をお手本にする、といった意味で使うのは間違いとされています。

うーん、使い方が難しいことばです。

他人の醜聞、失敗、挫折などをわが身の参考にしようとするときに、このことばは力を発揮します。

ちなみに、読売新聞の記事では過去40年間に「他山の石」が使われたのは508回ありました。さすがは新聞社、他人の成功をお手本にする意味には使われていません。現実には政治家などが誤用したまま問題発言になったりしている例もあるようです。使い方は要注意。

そんなぐあいですから、いまどき、勇気をもって使う人が減っているようです。使ったところで「誤用だ」などと笑われてしまえば恥かいてしまうものですから、つい敬遠するんですね。それなりの「知性」が試されることばは、やがては消えていくのでしょうか。和語の「人の振り見てわが振り直せ」が類義語です。こちらのほうがわかりやすいですね。

文学者の文学論,文学観はいくらでもあるが,科学者の文学観は比較的少数なので,いわゆる他山の石の石くずぐらいにはなるかもしれないというのが,自分の自分への申し訳である。

寺田寅彦「科学と文学」1933年

この使い方は秀逸。おのれを卑下して効果的です。知性と大胆の結合。うなります。

「他山の石もって玉をみがくべし」からの命名されたのが、攻玉社。近藤真琴(1831-86)が開塾しました。中高一貫の男子校。四代目笑福亭円笑師の母校です。

品川区西五反田なのですが、JR山手線の目黒駅を降りて東急目黒線に乗り換えて一個目の不動前駅で下車。ここらへんは目黒区と品川区が接しているのですね。芝にあったのですが、関東大震災目で倒壊したためこちらに移ってきました。目黒駅のホームには広告看板が見えます。「攻玉社」と。この看板を見るたび「玉を攻めるとは、はて、なんていやらしいんだ」と内心思った人は少なくないことでしょう。ものを知らないとあらぬ方向に妄想が躍るのですね。

「攻」を「おさめる」または「みがく」と読んだりしますが、「磨く→修める」意味で、同義です。

先の大戦前には、攻玉社は海軍兵学校の予備校のような学校で、海兵の海城、陸士の成城(新宿の)と同じ役割を請け負っていました。「攻」の文字はむしろ好戦的なイメージで喜ばれたのでしょう。


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落語あらすじ事典 千字寄席編集部

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