【お見限り衛士の焚く火の夜は燃えて】

おみかぎりえじのたくひのよはもえて

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お見限りはご無沙汰、お見捨ての意。それを、平安時代に禁中の諸門を警備した「御垣守みかきもり」の衛士えじ(兵士)と掛けています。

「焚く火の…」以下は、この衛士が夜通し松明たいまつを焚いて詰めたことから。10世紀末成立の『蜻蛉日記かげろうにっき』に「火などちかき夜こそにぎははしけれ」「衛じのたくひはいつも」とあるのが元ネタ。

実は「お見限り」は、なじみの遊郭に不義理をし、しばらくぶりに登楼した客に、皮肉混じりに言われる言葉。だからこそ、その夜の「火は燃えて」は、何やら意味深長なわけですが。

と書いてきましたが、じつはこの歌、「百人一首」のうちの一首です。江戸時代には『徒然草つれづれぐさ』と「百人一首」はかなり幅広い階層に共有された教養だったので、落語でもよく引き合いに出されます。

御垣守 衛士の焚く火の 夜は燃え 昼は消えつつ ものをこそ思へ

詞花集しかしゅう 大中臣能宣おおなかとみのよしのぶ

皇居の御門を守る警護の者の焚くかがり火が夜は燃え昼は消えるように、私も夜は興奮勃起して昼はぐんにゃり萎えて心は物思いをすることだ。かがり火に、恋に身を焦がすわが身を重ねて詠んでいるところがミソです。

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落語あらすじ事典 千字寄席編集部

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