うそをつきじのごもんぜき

  成城石井

「ええ、うそをつきゃあがれ」と軽く相手を突き放すときの軽口。

「うそをつく」と、江戸の地名の築地を掛け、さらに、その地にある本願寺とつなげています。

「うそを築地」と切ることも。

「門跡」は幕府が制定したもので、出家した皇族が住職を務める格式の高い寺院のこと。築地本願寺は西本願寺(浄土真宗本願寺派の本山)での唯一の直轄寺院です。

門跡に準じる「准門跡」の格ながら、俗にはやはり「ご門跡さま」と呼ばれます。中央区築地の場外市場には「門跡通り」があります。

江戸期にはこのあたりに寺院があったそうです。現在の建物は関東大震災(1923年)で焼失した後、昭和9年(1934)にできたもの。伊藤忠太の設計です。

ですから、旧築地市場一帯が本願寺の境内でした。地名から、このむだぐちは江戸東京限定です。

ほかに「うそを筑紫(つくし)」などとも言いました。

うそつきのむだぐちはけっこう多いもの。

「うその皮のだんぶくろ」「うそばっかり筑波山」……。ご存じ「うそつき弥次郎」などが代表例です。

 成城石井

落語あらすじ事典 千字寄席編集部

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