おまえさんは変に気が利きすぎる、というたしなめの言葉を、ことば尻の「ぎす」から時鳥と掛けるしゃれ。
その縁で五月の空を出したもの。同時に五月の空で、そのわりには上の空→肝心なところが抜けているという意味も含めています。
文化14年(1817)の序のある人情本『まがきの花』(鼻山人作)の中にこのしゃれがありますが、これは吉原のお座敷の情景。義理と借金で恋仲の花魁梅川に表向き会えない色男の忠兵衛。なんとかその借金を、いやな客八右衛門からしぼり取ろうと、しぶしぶそのお座敷に顔を出す梅川。その梅川に味方する若い衆東八が、こっそり二階に隠している忠兵衛のようすが気がかりで、座敷と二階を行ったり来たり。それをわけ知りの幇間萬里が、そんなことじゃバレちまうと、むだぐちにこと寄せてたしなめる場面です。
こうしてみると、むだぐちも今では、出典を当たらないと、もうよく理解できなくなっていることが多いようです。
【語の読みと注】
時鳥 ほととぎす
花魁 おいらん