つるかめつるかめ【鶴亀鶴亀】ことば

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江戸の町人特有の、縁起直しの呪文。

相手に不吉なこと、不浄なことを言われた後、必ず間を置かずに「つるかめつるかめ」と重ねて唱えます。鶴と亀はともに長寿のシンボル。縁起のいいものとされていたからで、いうなら精神的な口直しでしょう。

芝居では黙阿弥の代表的な世話狂言「髪結新三」で、大家に「オレに逆らったらてめえの首は胴についちゃあいねえんだ」と脅かされた小悪党の新三が、すかさず大げさに唱えて震える喜劇的なシーンが印象的です。

昭和初期までは老人の間では普通に使われていたと思います。恐怖の度合いが強い場合は、さらに「万万年」を付けて呪力を強化します。

後家安「それじゃあちょっとおらあ行ってくるから」
お藤「また竹の子かえ」
後家安「縁起でもねえ、鶴亀鶴亀」

        鶴殺疾刃包丁(後家安とその妹)

「竹の子」は博打のこと。剥かれるところから。

『明治東京風俗語事典』(正岡容)には「つるかめつるかめ」の項目が立っていて、「ツルもカメもめでたい動物なので、縁起の悪いときにこうとなえる」とあります。この本は、典拠をすべて円朝作品から採取しているので、出元は同じでしょう。

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へっつい【竃】ことば

【RIZAP COOK】

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かまど。

石や土でつくり、漆喰で塗り固めたもの。「竃幽霊」「品川心中、上」などに登場します。

【RIZAP COOK】

しきいがかもい【敷居が鴨居】ことば

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「敷居が高い」の洒落。

「敷居が高い」とは、相手に不義理のある場合に使うことで、格式ある家や老舗に入りにくいことの意に使われることが多く、これは誤用です。

このことば、六代目円生がよく使いました。

うかがわなくてはならんのですが、どうもオタクには敷居が鴨居になっちまって。なにしろ借金がそのままですし。

六代目三遊亭円生

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ねずみいらず【鼠入らず】ことば

【RIZAP COOK】

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鼠が入ってこないように隙間をなく作った食器棚。

だれだい。鼠入らずの中に首つっこんでるのは。六さんかい。

品川心中

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てきやく【敵薬】ことば

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配合具合や病状にによっては毒となる薬のこと。

例えば、バッファリンなどの血液をサラサラにする薬を間違って血友病患者などが服用すれば、敵薬どころか死薬となりかねません。これが広く現代にもあてはまるのは、純粋に調剤される医薬品としての薬だけでなく、広く栄養素や、それらを含む食物にも当てはまる故です。別に洒落ではないのですが、同音異義語の「適薬」の部分的な対義語となります。ビタミン過多、脂肪過多などはもちろん「敵薬」のうちで、肉類の食べすぎや糖分、塩分の過剰摂取も、広い意味の「敵薬」。この意味が転じて、鰻と梅干などのいわゆる「食い合わせ」も敵薬と呼ばれることがありました。この場合、経験則のみで科学的根拠は怪しいものが多いのですが、とにかく、後から食べた方の食材が敵薬とされるわけです。

もう一つ、近代では、樋口一葉の「大つごもり」に「金は敵薬」とあり、抽象的な使用例も加わってきています。

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ちんちんかもかも【ちんちん鴨鴨】ことば

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「ちんちん鴨」と縮めた形もありますが、きれい事で言えば、男女の仲がむつまじいことで、悪く言えばいちゃついて見ていられないさまです。

そこからさらにエスカレートして、文字通りの濡れ場、くんずほぐれつのセックスそのものの隠語ともなりました。

「かもかも(鴨鴨) 」 は単なる語呂合わせですが、一説には、鴨肉は薬食いとして、江戸では美味で貴重品だったことから連想して、女の肉体そのものの象徴としてくっついたともいわれます。

うがってみれば、ドン・ジョバンニやカサノバのような女たらしには、すべての女はまさしく鴨(獲物)、「ヘイ、カモン」だったこともあるでしょう。

置炬燵で、ちんちん鴨だか家鴨だか。

                                                  三遊亭円朝「敵討札所の霊験」

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ちんちん【ちんちん】ことば

ライザップなら2ヵ月で理想のカラダへ

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鉄瓶がかっかと熱くなる擬音語から、嫉妬に胸を焦がす意味です。

これは男の場合にも言いますが、ほとんどは女のヤキモチ。「熱い」の意味から、まったく反対の嫉妬される側、すなわち熱々の恋人同士を指すことも。

この場合には次項の「ちんちんかもかも」として使われた場合が大半です。

花魁の方じゃ、いやな芸者じゃあないかってんで、ちんちんを起こして、あっしを夜っぴて花魁が寝かさない。 

                                ちきり伊勢屋

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あだじけない【あだじけない】ことば

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けちん坊、吝嗇である、の意味です。

「ケチくさい」のニュアンスから「貧弱な」「取るに足りない」という意味も派生しました。語源は、「大言海」によると、「あた(あだ)」は蔑みの意味を表す接頭語、「しけない」は「しわけなし(い)」が縮まった言葉で、「しわい=ケチ」の古い形です。

江戸っ子風の洒落言葉として「あたじけなすび(茄子)」という表現もあります。これは文字通り「ケチん坊」のことで、感謝の意味の「かたじけなすび」とまったく同型です。

ふだんあだじけない嘉藤太が平松なぞへ連れて参ってあれを喰え是をたべろと馳走致しますのは不思議な事だと。

                        三遊亭円朝「敵討霞初島」

【語の読みと注】
平松 ひらまつ:料亭の名

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いいまのふり【いい間の振り】ことば

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徹底的に否定的なニュアンスで「気取って」「きざったらしく」「半可通に」という悪口。

「いい間」というのはやはり、歌舞伎から来ているのでしょう。役者が絶妙の間(タイミング)で見栄を切るのを真似て、オツに気取って見栄を張り、上から目線で鼻持ちならない粋人気取りのことです。勘違いでおのれに酔いしれているような人間は、今の世にも掃いて捨てるほどいますね。

おれもいい間のふりをして、ああ、弥助でもいれな、なんて高慢なつらをしたんだが。    

   五人廻し

【語の読みと注】
弥助 弥助:すし

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汲み立て くみたて 演目

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八笑人からの構成。町内の連中のすったもんだ噺。少々匂い立ちますが。

【あらすじ】

町内の連中が、美人の常磐津のおっ師匠さん目当てに、張り合って稽古に通っている。

なぁに、常磐津などはどうでもいいので、気に入られていいことがしたい、ただそれだけ。

それだけに嫉妬が渦巻き、ライバルに対する警戒は相当なもの。

「野郎が四度稽古してもらったのになんでオレはまだ二度なんだ」
とか、
「膝と膝を突き合わせて、間違えたらツネツネしてもらえるから、唄より三味線を習おう」
とかいうような、不心得者も出る。

ところが、留さんが、
「師匠はどうやら建具屋の半公とできてるらしい」
という噂を持ってきたので、一同、顔色が変わる。

なんでも、師匠の部屋へ通ってみると、半公が主人然として、師匠と火鉢越しのさし向かい。

火鉢が真ん中。

半公向こうの師匠こっち、師匠こっち半公向こう。

やがて半公がすっと立つと、師匠もスッ。

ぴたっと障子を閉めて、中でコチョコチョと二人じゃれついていたというから、穏やかではない。

そこで、今、師匠の家に手伝いに行っている与太郎を捕まえて聞きただすと、案の定、このごろ、半公がちょくちょく泊まりに来る、という。

ある日、二人が大げんかして、半公が師匠の髪をつかんでポカポカなぐったが、その後、師匠が
「いやな奴に優しくされるより、好きな人にぶたれた方がいい」
と抜かしたそうな。

そういえば、与太郎、今日はいつになくいい身なりをしているので、聞いてみると、
「師匠と半公のお供で柳橋から船で夕涼みだ」
という。

「おっ師匠さんが『あの有象無象どもが来ると、せっかくの気分が台なしだから、ないしょにしておおき』って言ってた」
「なんだ、その有象無象ってえなあ」
「うん、おまえが有象で、こっち全部無象」
「こんちくしょうめっ」

「あんまり人をばかにしてやがるから、これから皆で押しかけて、逢瀬をぶちこわしてやろうじゃねえか」
と、すぐ相談がまとまった。

「半公の野郎が船の上で、師匠の三味線で自慢のノドをきかすに違いないから、こっちも隣に船を寄せて、鳴り物をそろえてドンチャカドンチャカ、ばか囃子でじゃましてやろう」
というわけ。

「逃げたらどこまでも追いかけていって、半公がなにかぬかしたら、かまわないから袋だたきにしちまおう」
という算段。

さて数刻後、船の中。

半公がいよいよ端唄をうなり出すと、待ってましたとばかり隣からピーヒャラドンドン。

そのうるさいこと。

「やあ、お師匠さん、見てごらん。有象無象が真っ赤になって太鼓をたたいてら」
「うるせえ、てめえじゃ分からねえ。半公を出せ」
「なんだ、なんだ。師匠とどういう仲になろうと、てめえたちの指図は受けねえ。糞でもくらやあがれ」
「おもしれえ。くってやるから持ってこい」

やりあっていると、間に肥船がスーッ。

「汲み立てだが、一杯あがるけえ?」

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【しりたい】

「八笑人」の懲りない面々

オチの部分の原話は、滝亭鯉丈(1777-1841)作の滑稽本『花暦八笑人』三編下(文政6年刊=1823)です。

「八笑人」は落語「花見の仇討ち」のネタ本でもあり、いわばこれは、その続編の一部。

あの能天気な連中が、また懲りずに、妙ちくりんな趣向を思いつきます。

これはその一人卒八が考えた納涼の趣向で、両国橋ぎわに小船と屋根舟を出し、仲間が両方に分かれてののしりあう、というもの。

卒八「サア両方でくそをくらえ、イヤうぬ(=おまえ)くらえ、われくらえと、いいつのっている中へ、おれが、こえ船をたのんで、うわのりをして、グツと中へのり込で、サア汲たてあがらんかあがらんかというが、おちだがどうだろう」

というわけで、オチがついた馴れ合い狂言を仕組むのですが、あまりに下品というのでこれは中止。改めて、両国橋から身投げのふりで飛び込むという人騒がせをやらかすことになります。

『花暦八笑人』と滝亭鯉丈については「花見の仇討ち」をお読みください。

六代目円生の極めつけ

明治から大正にかけ、俗に品川の円蔵と呼ばれた四代目橘家円蔵が高座にかけました。記録は明治30年(1897)の円蔵の速記が最古で、その没後は、門下の五代目三遊亭円生、孫弟子の六代目円生へと継承されました。

もっとも、円蔵もあまり演じなかったので、円生は、初代三遊亭円右の速記などで覚えたと語っています。戦後は、円生の独壇場で、極めつけの十八番でした。

常磐津の素養がないとできない噺なので、円生没後は弟子の五代目円楽がたまにやるくらいでしたが、近年では三遊亭小遊三や五街道雲助などが手掛けています。

蚊弟子

常磐津のお師匠さんは、「百川」始め、落語にはちょくちょく登場します。

「オシサン」または「オッショサン」と発音しますが、落語で師匠というと、美人でおつな年増ときまっています。そこで、我こそは師匠としっぽりと……と、よからぬ下心で経師屋連がわいわい押しかけ、騒動を起こすわけです。

なかには「蚊弟子」といって、暑いので、涼みがてら夏のうちだけ稽古にくる手合いもあったとか。

江戸末期には、各町内に一人は遊芸の師匠がいたもので、清元、常磐津、長唄、歌沢などさまざまでした。なんでもござれ教える師匠も中にはいて、それを俗に五目(寿司の五目から)の師匠と呼んだものです。

肥船

葛飾や市川など江戸湾の在から肥を仲買いし、取り仕切る渡世人の組織は、香具師、博打などと並んで一種の治外法権を持ち、なかでも葛西の肥汲みは、江戸の裏社会に隠然たる勢力を持っていました。

彼らが立往生(ストライキ)をすれば、大名から長屋の町人に至るまで、肥の引き取り手がなく、たちまちに往生することになるわけです。

集めた肥を船で運ぶようになったのは、永代橋が落下する大惨事(文化4=1807年)のあと、橋を荷車が通れなくなったからだといいます。

船は出ませんが、肥汲みが登場する落語には、ほかに「法華長屋」があります。

【語の読みと注】
常磐津 ときわづ
有象無象 うぞうむぞう
逢瀬 おうせ
端唄 はうた
経師屋連 きょうじやれん:師匠を張り合う意味

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