円朝作品の索引

落語あらすじ事典 web千字寄席

三遊亭円朝の全作品を解説します。

あ行

あくび指南 →欠指南

欠指南(商法のいろいろ十)

朝顔

朝顔買い

朝顔屋(商法のいろいろ四)

浅草ひしや引札

浅草氷月庵引札

朝寐坊

熱海土産温泉利書

穴どろ

甘酒屋(何も商法二)

雨宿り →三題噺 雨宿り・韓信股潜・近江八景

雨夜の引窓

有馬土産千代の若松

粟田口霑笛竹

安中草三伝 後開榛名の梅が香

一対の子供(和洋小噺)

井戸掘(商法のいろいろ二)

田舎娘

田舎者

田舎者の観音参り

委任状

戌の歳

井上馨・円朝寄せ書き

猪の夫婦

入れ髪 →落語〔星野屋〕

因果塚の由来 →離魂病

植木屋芝居

植木屋曽我

上野空也堂引札

浮かれの屑選り →紙屑のよりこ

雨後の残月

牛車

謡好き →三題噺 謡好き・しやくり・剣菱

自惚

乳母の女郎買 →三題ばなし 盲人の洋行・地獄の飛脚・乳母の女郎買

梅 →三題ばなし 梅・寒中の雨・狸の腹

梅若七兵衛

売そめ

雲中観音の図(円朝筆)

英国孝子ジョージスミス之伝

英国女王イリザベス伝

蝦夷訛

蝦夷錦古郷の家土産

閲・校閲

円花風(三遊春の風俗)

円橘風(三遊春の風俗)

円喬風(三遊春の風俗)

円玉風(三遊春の風俗)

縁きり榎

演劇雑話

円好風(三遊春の風俗)

円三郎風(三遊春の風俗)

円雀風(三遊春の風俗)

円生風(三遊春の風俗)

円太郎(父)と寿照尼(母すみ)の影絵と辞世

円太郎風(三遊春の風俗)

円朝憲法

円朝自筆の領収書

円朝手記〔塩原太助伝・真景累ケ淵・西洋人情咄生人埋ポルリードエライフ〕

円朝の得意ばなし →三題噺 達摩の脚気・桜に鶯・円朝の得意ばなし

円朝筆・雲中観音の図

円朝筆・踊塚の題字

円朝筆・達磨

円朝筆・達磨(見性成仏)

円朝筆・花

円朝筆・払子

円朝筆幽霊画

円朝風(三遊春の風俗)

円朝落語集

縁日の駝槖師(商法のいろいろ八)

円遊風(三遊春の風俗)

扇拍子

欧洲小説 黄薔薇

応文一雅伝

近江八景 →三題噺 雨宿り・韓信股潜・近江八景

大磯虎の閏衣 →三題噺 釈迦如来の袈裟・道鏡の褌・大磯虎の閨衣

大岡政談 さぐり札

荻江の伝 →月に謡荻江の一節

荻江露友の伝(点取り) →元祖荻江露友の伝(点取り)

荻の若葉

後開榛名の梅が香

お駒丈八 →三題噺 白木屋お駒・駿河細工・東海道五十三次

阿三の森(怪談阿三の森)

唖の釣

落語(おとしばなし)暦・腎張りの下女・交情の睦い御夫婦

落語(おとしばなし)三月のお節句・外妾・佃島

お初徳兵衛 →堀の青柳

親子酒 →親子の生酔ひ

親子の情

親子の聾

親子の生酔ひ

泳の医者

音楽風呂

温故知新 →温故知新(またあうはる)

女子の梅見 →三題ばなし 貴紳の漫歩・壮士の洋行・女子の梅見

女の子別れ →親子の情

か行

開化一口ばなし

怪談阿三の森

怪談乳房榎

怪談牡丹燈籠

怪談牡丹燈籠(点取り)

開店

鏡ケ池操松影

書付

垣の山吹 →三題噺 達摩の遠足・垣の山吹・茶席の放屁

掛取万歳

外妾(かこいもの) →落語(おとしはなし) 三月のお節句・外妾・佃島

累が淵(真景累が淵)

鍬沢

鰍沢二席目

火事息子

華族のお医者(何も商法八)

六敵討霞初嶋

敵討義侠の惣七

敵討札所の霊験

刀剣商(商法のいろいろ七)

火中の連華

かつぎ屋(何も商法五)

金の働定を仕ずに来た(和洋小噺(洋))

紙屑のよりこ(何も商法十)

かり枕

漢学先生 →即席三題噺 漢学先生・宵暗・なまけもの

寒食 →三題噺 寒食・書生・芳野山

韓信股潜 →三題噺 雨宿り・韓信股潜・近江八景

元祖荻江露友之伝(点取り)

寒中の雨 →三題ばなし 梅・寒中の雨・狸の腹

義侠仇討残る月影

菊模様皿山奇談

菊文様皿山奇談(草双紙)

〔紀行〕

貴紳の漫歩 →三題ばなし 貴紳の漫歩・壮士の洋行・女子の梅見

記念のいしぶみ

狂歌

狂言の買冠

侠骨今に馨く賊胆猶ほ暒し松の操美人の生埋

清元の出語り洋服の道行 →三題ばなしランプから幽霊・やまと新聞大当り・清元の出語り洋服の道行

霧隠伊香保湯煙

金魚の芸妓           

金朝風(三遊春の風俗)

首ったけ

首屋(商法のいろいろ一)

首屋にチヨツキ屋(和洋小噺)

熊の皮 →八百屋

芸人談叢 三遊亭円朝

今朝春三ツ組盞

下女の心意気

剣菱 →三題噺 謡好き・しやくり・剣菱源兵衛玉 →捩金屋捩兵衛

恋病 →三題噺 春雨・恋病・山椒の摺古木

〔口演による文芸〕

孝行酒屋

黄薔薇

〔上野下野道の記〕沼田の道の記・塩原多助別

高麗の茶碗

故円朝の遺言状と本葬

黄金餅(何も商法十二)

心の眼 →心眼

乞食 →大仏餅

越路太夫 →三題ばなし 越路太夫・比丘尼・蕃椒

小雀長吉

御前汁粉 →士族の商法

小僧の心意気

小鼓

古道具商(商法のいろいろ十四)

子は鎹 →親子の情

こび茶

駒長

暦 →落語(おとしばなし)暦・腎張りの下女・交情のの睦い御夫婦

暦ずき

五料残し →落語〔星野屋〕

子別れ →親子の情

権助の心意気

さ行

魚の話

桜に鶯 →三題噺 達摩の脚気・桜に鶯・円朝の得意ばなし

さぐり札

〔雑纂〕

廓雀小稲出来秋・序文

猿丸、猿丸大夫 →道中の馬子

三月のお節句 →落語(おとしばなし)三月のお節句・外妾・佃島

山椒の摺古木 →三題噺 春雨・恋病・山椒の摺古木

三題噺 雨宿り・韓信股潜・近江八景

三題噺 謡好き・しやくり・剣菱

三題ばなし 梅・寒中の雨・狸の腹

三題噺 漢学先生・宵暗・なまけもの

三題噺 寒食・書生・芳野山

三題ばなし 貴紳の漫歩・壮士の洋行・女子の梅見

三題ばなし 越路太夫・比丘尼・蕃椒

三題噺 釈迦如来の袈裟・道鏡の褌・大磯虎の閨衣

三題噺 白木屋お駒・駿河細工。東海道五十三次

三題咄新作双六

三題噺 大仏餅・袴着の祝・乞食 →大仏餅

三題噺 達摩の遠足・垣の山吹・茶席の放屁

三題噺 達摩の脚気・桜に鷺・円朝の得意ばなし

三題噺 春雨・恋病・山椒の摺古木

三題ばなし 盲人の洋行・地獄の飛脚・乳母の女郎買

三題ばなし 八百屋お七・東方朔・ソコラでゲセウ

三題話 遊女の無心・大黒天・彫物師

三題ばなし ランプから幽霊・やまと新聞大当り・清元の出語り洋服の道行

三人起請

三百植木 →縁日の駝槖師

三遊亭円朝(談話)

三遊屋引札

三両残し →落語(星野屋〕

塩原多助(紀行) →〔上野下野道の記〕沼田の道の記・塩原多助

塩原多助一代記

三塩原多助後日譚

塩原多助旅日記

塩原太助伝(点取り) →円朝手記

塩原の怨霊

地獄の飛脚 →三題ばなし 盲人の洋行・地獄の飛脚・乳母の女郎買

地獄廻り

詩好の王様と棒縛の旅人(和洋小噺)

士族の商法(何も商法九)

七福神詣

七福神参り

死なゝけりや癒ら無い(和洋小噺(和))

死神(名づけ親)

しの字嫌い →かつぎ屋

芝浜の革財布

渋酒

治部太夫(和洋小噺(和))

始末の極意

釈迦如来の袈裟 →三題噺 釈迦如来の袈裟・道鏡の褌・大磯虎の関衣

しやくり →三題噺 謡好き・しやくり・剣菱

正月丁稚 →かつぎ屋

上州沼田 下新田日記

樟脳玉 →捩金屋捩兵衛

商法のいろいろ

情話名人(三遊亭円朝と語る)

書簡

書生 →三題噺寒食・書生・芳野山

序文

汁粉屋 →士族の商法

素人汁粉 →士族の商法

白木屋 →三題噺 白木屋お駒・駿河細工・東海道五十三次

城木屋 →三題噺 白木屋お駒・駿河細工・東海道五十三次

白木屋お駒 →三題噺 白木屋お駒・駿河細工・東海道五十三次

しわいや

吝薔家(しわんぼう)

心眼

真景累が淵

真景累ケ淵(覚書) →円朝手記

心中時雨傘

新朝風(三遊春の風俗)

新富町塩瀬引札

腎張りの下女 →落語(おとしばなし)暦・腎張りの下女・交情の睦い御夫婦

新聞錦絵

信用借金(和洋小噺(洋))

粋狂連興笑連・一恵斎芳幾画 三題咄新作双六

杉酒屋(何も商法一)

駿河細工 →三題噺 白木屋お駒・駿河細工・東海道五十三次

政談月の鏡

西洋人情噺(点取り)

西洋人情咄 生人埋ボルリードエライフ(覚書) →円朝手記

西洋人情話 英国孝子ジヨージスミス之伝

西洋の丁稚(和洋小噺)

〔西洋落語〕

性和善 →初商法

世辞屋

世辞屋(商法のいろいろ十二)

雪月花

雪月花一題ばなし

雪月花一題ばなし・冒頭文

雪月花三遊新話

千人講の久蔵

壮士の洋行 →三題ばなし 貴紳の漫歩・壮士の洋行・女子の梅見

曽我桜

即席三題噺 漢学先生・宵暗・なまけもの

ソコラでゲセウ →三題ばなし 八百屋お七・東方朔・ソコラでゲセウ

その他(雑纂)

た行

大黒天 →三題話 遊女の無心・大黒天・彫物師

大国の用

大の懶惰者

大仏の目

大仏餅

大仏餅

大仏餅(商法のいろいろ六)

大名の月見 →昔の大名の心意気

畳水練

谷文晁の伝

狸の腹 →三題ばなし 梅・寒中の雨・狸の腹

達磨(円朝筆)

達磨(見性成仏)(円朝筆)

達摩の遠足 →三題噺 達摩の遠足・垣の山吹・茶席の放屁

達摩の脚気 →三題噺 達摩の脚気・桜に鶯・円朝の得意ばなし

〔談話〕

蓄音機 →世辞屋

乳房榎(怪談乳房榎)

茶器の鑑定

茶席の放屁 →三題噺 達摩の遠足・垣の山吹・茶席の放屁

茶道具商(商法のいろいろ十一)

月に謡荻江の一節 一名荻江の伝

月の殿様 →昔の大名の心意気

佃島 →落語(おとしばなし)三月のお節句・外妾・佃島

釣指南(商法のいろいろ九)

鶴殺疾匁庖刀

〔点取り・草稿・覚書〕

東海道五十三次 →三題噺 白木屋お駒・駿河細工・東海道五十三次

蕃椒(とうがらし) →三題ばなし 越路太夫・比丘尼・蕃椒

道鏡の褌 →三題噺 釈迦如来の袈裟・道鏡の褌・大磯虎の閏衣

道具屋 →ほし店の道具屋

骨董商(どうぐや)(何も商法十一)

道中の馬子(何も商法六)

唐茄子屋、唐茄子屋政談 →初商法

東方朔 →三題ばなし 八百屋お七・東方朔・ソコラでゲセウ

都々逸

富子の影絵と辞世

吃の道具屋

な行

菜刀(ながたん)息子

交情(なか)の睦い御夫婦 →落語(おとしばなし)暦・腎張りの下女・交情の睦い御夫婦

名づけ親〔死神〕

何も商法

浪花座演芸番組

なまけもの →即席三題噺 漢学先生・宵暗・なまけもの

成田小僧 

業平文治漂流奇談

錦絵

日蓮大士道徳話

二人吃

日本の小僧(和洋小噺)

日本橋布袋屋引札

にゆう

人情の松茸

沼田の道の記 →〔上野下野道の記〕沼田の道の記・塩原多助

根岸お行の松因果塚の由来 →離魂病

捩金屋捩兵衛

捩兵衛 →捩金屋捩兵衛

年始まはり

年譜

残る月影 

熨斗袋

後の業平文治

は行

俳諧

〔俳譜・狂歌・都々逸・端唄〕

端唄

羽織の蕎麦

袴着

袴着の祝 →大仏餅

八景隅田川

初商法

初音の鼓 →骨董商(どうぐや)

初春の速記

花(円朝筆)

〔花咲爺の行列〕

話之種

花菖蒲沢の紫

春雨 →三題噺 春雨・恋病・山椒の摺古木

春の夜話

番組

火打鎌売(商法のいろいろ五)

引札

比丘尼 →三題ばなし 越路太夫・比丘尼・蕃椒

日千両大江戸賑

一口話 朝寐坊

一口話 田舎娘

一口話 田舎者の観音参り

一口話し 自惚

一口話 親子の聾

一口話 親子の生酔ひ

一口話 下女の心意気

一口話 小僧の心意気

一口話し 小鼓

一口話 権助の心意気

一口話 渋酒

一口話 吝薔家

一口話し 大の懶惰者

一口話 人情の松茸

一口話 又一題

一口話 昔の大名の心意気

一口話 無筆の田舎の名主

ひねりや(何も商法七)

百物語

福禄寿

藤浦周助の影絵と辞世

船徳 →堀の青柳

文七元結

米商

弁天おふぢ

〔補遺〕

星とり竿

星野屋

ほし店の道具屋(何も商法四)

牡丹燈籠(怪談牡丹燈籠)

払子(円朝筆)

堀の青柳

彫物師 →三題話 遊女の無心・大黒天・彫物師

ぽんこん →骨董商(どうぐや)

本堂建立

ま行

温故知新(またあうはる)

又一題

松と藤芸妓の替紋

松の操美人の生埋

万橘風(三遊春の風俗)

操女学校

三遊(みつあそび)春の風俗

緑林門松竹

茗荷(和洋小噺(和))

茗荷屋 →茗荷

昔の大名の心意気

虫屋(商法のいろいろ三)

無筆の田舎の名主

明治の地獄

名人競

名人長二

盲人の洋行 →三題ばなし・盲人の洋行・地獄の飛脚・乳母の女郎買

元犬 →戌の歳

や行

八百屋(何も商法三)

八百屋お七 →三題ばなし 八百屋お七・東方朔・ソコラでゲセウ

奴勝山

山崎屋

やまと新聞大当り →三題ばなし ランブから幽霊・やまと新聞大当り・清元の出語り洋服の道行

闇夜の梅

遺言状

遊女の無心 →三題話 遊女の無心・大黒天・彫物師

郵便報知新聞の錦絵

幽霊画(円朝筆)

行倒の商売(商法のいろいろ十三)

雪夜の乳貰

湯屋番

宵暗 →即席三題噺 漢学先生・宵暗・なまけもの

芳野山 →三題噺 寒食・書生・芳野山

ら行

落語 お駒丈八 →三題噺 白木屋お駒・駿河細工・東海道五十三次

落語 白木屋 →三題噺 白木屋お駒・駿河細工・東海道五十三次

落語 城木屋 →三題噺 白木屋お駒・駿河細工・東海道五十三次

落語 道具屋 →ほし店の道具屋

落語のはじめ

落語の濫觴

落語〔星野屋〕

ランプから幽霊 →三題ばなし ランプから幽霊・やまと新聞大当り・清元の出語り洋服の道行

離魂病 一名因果塚の由来

柳光亭引札

両手に花 →縁きり榎

良薬(和洋小噺(洋))

烈婦お不二

わ行

和洋小噺

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三代目小さんの円朝観

尾崎秀樹。「おざきほつき」と読みます。かつては大衆文学の評論と言えばこの人がダントツでしたが、いまは亡き人、もう忘れ去られているかもしれません。

評論家というのは作家と違って、生きている間はすさまじく席巻し影響を及ぼすものですが、死んでしまうとそれっきりです。他人の褌で相撲を取る風情が敬遠されるのでしょうか。顧みられません。河上徹太郎も、亀井勝一郎も、平野謙も、十返肇も、保正昌夫も、浅見淵も、荻昌弘も、あるいは淀川長治でさえ例外ではなかったかもしれません。唯一の例外は小林秀雄でしょうか。彼の書き残したものは、りっぱにクリティークという作品として残っているように、私には見えるのです。

ま、それはともかく。

尾崎秀樹の仕事はチャンバラ小説ばかりがターゲットだったのかと思っていましたら、初期の頃には落語、それも円朝について記したものがあったのです。「三遊亭円朝」という、一冊の刊行物にするにちょいと寸足らずではありますが、薄っぺらな書きなぐった散文とは異なる味わい、重厚で濃密で、しかも、円朝と仏教とのかかわりについて言及しているのは、おそらく、この人と関山和夫くらいかもしれません。その中で、円朝について少し下った世代はどう見ていたか、というくだりがありまして、三代目柳家小さんの円朝観を、小さんの自著『明治の落語』から引用しています。たいへんおもしろい内容なので、孫引きではありますが、載せさせていただきます。

「円朝は狂言作者を抱えて飼い殺しにしていた。芸は拙いし採る処はないが、作者がついていて常に新しいものを出した。一口に云えば山勘で興行師のような処がありました。年に春秋二回、十五日間位しかやらなくて高いお金をとっていたが、芸は拙い人でした。そこへいったら燕枝は円朝とは訳が違う。燕枝は人物が出来て居た。伯猿という人も、大した評判でしたが、講釈のまずさ加減というものは、無茶苦茶でまるで素人のようなものでした。伯猿と円朝は何故そんなに評判になったかというと、それは番付によい処に出すものですから、あんなになったのです。……(略)話が下手でも、狂言作者が附いていたので、次から次へと新しく行った。それだけのもので円朝は頭の悪い人でした」

以上が三代目小さんの弁。いやあ、ひどい言いようです。でも、見ようによってはこんなところも円朝にはあったのかもしれませんね。

燕枝とは談洲楼燕枝。柳派における円朝のような存在です。円朝が逝った明治33年(1900)に、燕枝も半年ほど早く没しました。燕枝も新作をものして、円朝と違って自ら書き残したものが多いため、今後、格好の研究対象として発掘されていくことでしょう。伯猿とは松林伯円のこと。講談の親分。明治政府から、円朝と並び教導職に任ぜられました。まあ、円朝と同列とされる巨頭でした。

「狂言作者を抱えて」のくだり、これは尾崎も触れていますが、仮名垣魯文、条野採菊、瀬川如皐、宮城玄魚、河竹黙阿弥などとのつきあいを皮肉っているのでしょう。幕末に盛り上がった「粋興連」と称する同好の仲間でした。条野採菊は、江戸期には山々亭有人という名の戯作者で、明治期には警察新聞を買い取ってやまと新聞を創刊した新聞人。その変わり身は円朝にもいえることでしょう。円朝は、江戸期には道具噺で歌舞伎もどきのにぎやかな芸風でしたが、明治5年からは道具を弟子に譲って扇子一本の素噺に変身したのですから。

三代目小さんと言えば、夏目漱石が「三四郎」などで絶賛した希代の話芸の名人でした。尾崎の言葉を借りれば、小さんとはこんな具合です。

三代目小さんは、頭の方はお留守だが腕はいい「与太郎」の登場する「大工調」とか、「笠碁」などをやらすと絶品で鈍重で邪気のない性格が、そのまま作中人物の性格になったといわれたはなしかだった。それだけに、才人で時代を見抜く眼のある円朝の動きは、ムシズが走るくらい嫌だったらしい。

「頭の方はお留守」なのは与太郎であって、小さんではありません。 誤読しそうですが、 ややこしいです。

ここまで来たなら、ついでに、二派の違いを四代目小さんからの引用でちょこっと。これも尾崎論文からの孫引きですが、まあ、お読みください。

柳派と三遊派のちがいについて四代目小さんはうまいことをいっている。「総じて柳の方は地味で、三遊は華やか、柳は隠居やお医者が巧く、三遊は若旦那や幇間、つまり天災や猫久が柳なら、湯屋番や干物箱は三遊といったわけ」(「小さん聞書」参照)これでもわかるように柳派はどちらかといえば地味、三遊派は派手で、小さんのこのみに円朝があわないのはあたりまえかもしれない。

ここらへんにくれば、落語通の方々は「そんなもんだろう」と納得されることでしょう。手垢のついた、ものいいです。三代目小さんが円朝をくさすのは、こんなところからきているのかもしれませんね。

正岡子規『筆まかせ』円朝の話

正岡子規がつれづれにつづった『筆まかせ』第1編にある「圓朝の話」です。明治17~22年に書かれた身辺雑記です。

〇 円朝の話
ある時円朝の話しに、ある画師がある寺の本堂にて画をかきいるに、天人の処に至りしかば小菊という芸妓の顔を写したり。その時仏壇の下より一ヶ所の好男子現れ出で、実は小菊の兄にて故ありて世を憚る身なるが、何とぞかくまいくれまじくやといえば、画師承知して彼の男に小菊の着物をきせ頭を頭巾にて包み水桶と花とを持たしめ、墓参りの如くにいでたたせて出しやりたり。それと引き違えて入り来りしは女房にて、女房は天人の顔が小菊に似たりとてそろそろやきはじめければ、さにあらずと弁解しけるに女房「そんなこといったッてだめです、今此門口を出ていったのは誰です、あれはだれです。あれが小菊ではありませんか」。とさもねたましそうにいえば画師「ムムあれが小菊と見えたか」。女房「見えたかッて小菊はどう見たって小菊に」。画師「ムムそうか、とんだいい」トうれしそうにいうた処は女房の嫉妬に反映していかにも面白く。円朝の妙味ここにありと思えり。女房「何がとんだいいです、ほんとうにあなたは……小菊がきたならきたと、はっきりいっておしまいまさいヨ。……あなたもほんとうに……女房に……トくやしそうになきながらいう。画師「そう疑ぐっては困るじゃないか。小菊は何ですヨ。あの墓参りにきたのですヨ。水桶も花も持てたじゃないか。女房「墓参りなら花も持て来ましょうが、寺から花を持て出ることはありあません……」トここらの具合を聞きて余は小説の趣向もかくこそありたけれと悟りたり。

底本:『子規全集』第10巻初期随筆集(講談社、1975年)「筆まか勢」 適宜直しました。

円朝の物語運びの妙に、子規はうなっています。かくや。

円朝の迷宮

えんちょうのめいきゅう 落語あらすじ事典 千字寄席

三遊亭円朝

三遊亭円朝(1839-1900)は一見、巨大で複雑です。かの名人をめぐる、さまざまなものを見つけては備忘録として記録していきます。と同時に、全集で知り得る全作品を記していきます。

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森鷗外『澀江抽斎』に登場する円朝

森鷗外『澀江抽斎』の「その百十三」に以下のようなくだりがありました。かなり終わりのほうです。

或日又五百と保とが寄席に往った。心打は円朝であったが、話の本題に入る前に、かう云ふ事を言った。「此頃緑町では、御大家のお嬢様がお砂糖屋をお始になって、殊の外御繁昌だと申すことでございます。時節柄結構なお思ひ立で、誰もさうありたい事と存じます」と云った。話の中に所謂心学を説いた円朝の面目が窺がはれる。五百は聴いて感慨に堪へなかったさうである。

 明治20年頃のこと。澀江抽斎の四女陸(くが)が稲葉氏の援助で本所緑町に砂糖店を開きました。評判を聞きつけた円朝は、さっそく高座にちょっとした話題としてマクラにかけたようです。維新後、士族が生活自立に苦労しているのを見るにつけ、このように「がんばってます」といった情報を伝えたかったのでしょう。文中の五百(いお)は保(たもつ)の母、保は陸の夫です。円朝はつねに世事の変化に敏感だったといえます。

ただ、澀江陸はある事情で、円朝はじめ士族のご婦人方の応援にこたえられず、まもなく砂糖店を店じまいすることになってしまいました。残念です。